【降谷零】それならいっそ愛しながら壊してよ【名探偵コナン】

Episode39．オムライスと彼。 ページ39

「…どうしてすぐに言わなかったんですか」

全ての話をすると彼は息詰まったような短いため息をついた。
運転してくれているおかげで彼の怒りは前方に向けられていて少しホッとする。
由梨さんは現在は降谷さんが働いているカフェの上の探偵事務所に預けているという。
なんでも信用でき、頭の切れる探偵だというのだから私は今は彼を信じるしかない。
今は由梨さんもぐっすり寝ているので明日、訪ねることになった。

「それでAは今日はどこで寝るつもりですか」
「…ビジネスホテル探そうと思ってて」
「…よければ泊まりに来ますか」

その言葉に私は少し意味を考えて、運転中の彼をみる。
しかし、運転しているおかげで彼の顔が前方に向けられていて横顔しか見えないのがもどかしい。
そんなことよりも自分の下着の具合を必死に思い出しながら、どうせなら朝にパックをしてくれば良かったなんてグルグル頭を巡らせていると車が停まり、彼の家に到着した。

「お邪魔します」

彼の家は想像していたものとは違っていた。
もっと高層ビルでホテルのような綺麗なところに住んでいると思っていたからだ。
しかし、彼の部屋はきちんと整理されていて彼らしい。

「ここは潜入調査中の家です。本当の家はまた別にありますが、今は帰っていません」
「降谷さんって徹底されてますよね」
「Aが無防備すぎるんです」

彼が靴を脱ぎ上がるのを見て、私も続いて靴を脱ぐ。
着ていたパーカーを脱ぎ、黒のTシャツから露わになる二の腕を見てドキッと胸が高鳴った。
そして無償に彼に飛び込みたくなる。

「お腹空きましたか？」
「…ちょっと」

本当はかなり空いている。
警察署の方では憧れだった取調べ中のカツ丼はなかった為、お腹がもう限界だった。
すると彼は冷蔵庫から材料を取り出すので慌ててその手を止める。

「降谷さん、私がやります。休んでいてください」
「僕がつくります。Aこそ彼女なら甘えるべきですよ」

“彼女”そんな単語、ただの言い方、呼び方だと思っていたのにどうして彼の口から言われたら世界で一番の幸せ者になってしまうんだろう。
降谷さんは大きいかもしれないと出してくれた着替えを持って浴室へ行き、シャワーを浴びた。
下着は散らばった部屋の中から鞄に詰め込んだ荷物の中から可愛いものを選んだ。
リビングに向かうとオムライスとスープが机に置いており、彼が対面に座って私を待っているその姿に愛おしく胸が締め付けられた。

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