Episode17.それに名前をつけるなら ページ17
「それで?君の好きなものについてもっと教えてよ」
パーティーも少し落ち着いてきた頃、ずっと私に質問してくる鈴木様にそろそろうまく言って引いてもらわないと…と思っていると丁度、降谷さんが毛利さんと一緒に綺麗な女性と喋っている光景が目に飛び込む。
彼は向けたことのない、見せたことのない笑顔を彼女に向けて楽しげに喋っている。
「…あの男が好きなの?」
鈴木様が私の目線を追って降谷さんに気づいたのかそう尋ねてきたので首を振った。
「人の深層心理は、気になる人を見つめてしまう、目で追ってしまうことだよ」
「…ただ、あんまりにも綺麗な人だなと思って」
彼の脚の長さや、姿勢の良さから際立つ佇まい、拭っても纏わり付く雰囲気。
ため息が出るほど完璧な人。
「へぇ。抱かれでもしたの?顔が真っ赤だよ」
「あ、あんまりからかわないでください!私、仕事があるので失礼します」
そんなに分かりやすい顔をしていたのだろうか…
厨房に行き、休憩に入るよう言われたので従業員専用通路を使用して適当に椅子に座る。
その時、ポケットの中にあるスマートフォンがブブブ、と振動し、すぐに出ると降谷さんからだった。
従業員専用の出口から外に出ると、夜風が肌寒いので持ってきていたカーディガンを羽織り、非常用階段に向けて歩く。
「安室さん」
壁にもたれかかっている彼を見つけて、名前を呼ぶと彼は私を見るや否や右手首を掴んだ。
そして胸元に付いている名札を見る。
「本名で働いてるんですか」
「…はい」
もう先程のニコニコした彼はもういない。
いつも通り、降谷さんの顔だ。
彼の声色はいつもより少し低い気がして、怒っているのだろうと思った。
理由はわかる、本名で働いていることがどれだけ危険か彼は多分分かっているから。
「…降谷さん、怒らないでください」
「怒ってません。須崎さんは知っているんですか」
須崎さんにはどうしても本名で働きたいことを伝えていたので頷くと、彼は掴んでいた右手首から手が離れて髪をかき上げてため息をついた。
須崎さん…私の上司が許容していることをとやかく言う権利はないと顔が言っているみたいで、少し彼の思っていることがわかったような気がして嬉しい。
「それにしてもトリプルフェイスなんてすごいですね。誰かに対してあんなに笑顔を向けている降谷さん初めて見ました」
「仕事ですから」
そう言って「戻ります」と言った彼が私の横を通り過ぎた時、彼の残り香が夜風と共に鼻腔をくすぐった。
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モモナ(プロフ) - 富岡さん» コメントありがとうございます!お返事遅くなってしまい申し訳ないです…。低評価がついてもそれは一意見として受け止めておりますし、面白いと思っていただける方に向けて更新しているので気にしておりません。優しい心遣い、応援、ありがとうございます。頑張ります! (2020年2月11日 1時) (レス) id: 9a07434cd3 (このIDを非表示/違反報告)
富岡 - なんか低評価の荒らしがいるかもしれませんね・・・応援してるので頑張ってください! (2020年2月5日 17時) (レス) id: 6a73ff0034 (このIDを非表示/違反報告)
モモナ(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!安室さんの言葉遣い?って結構難しくて本当に謎大き男です…笑。応援ありがとうございます(*´ー`*)とってもうれしいです。頑張ります! (2020年2月3日 0時) (レス) id: 9a07434cd3 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 今回の作品もさっそくハマりました笑 モモナさんの文才というか、なんというか、本当に尊敬します(え) モモナさんの書く安室さんや夢主ちゃんが好きです(*^^*) 更新大変だとは思いますが、頑張ってください! (2020年2月2日 18時) (レス) id: 95154b8388 (このIDを非表示/違反報告)
モモナ(プロフ) - 焼き鳥さん» コメントありがとうございます。新作ということで、不安もありますがもっと楽しんでいただけるよう頑張りますね! (2020年2月2日 16時) (レス) id: 9a07434cd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:モモナ | 作成日時:2020年2月2日 13時