2話 姉妹 ページ2
朝起きて、リビングへ行くと砂糖のような甘い香りがふわっと漂っていた。
「おはようございます....」
「あら優梨ちゃんおはよう｡朝食、できてるわよ｡」
「...ありがとうございます」
エプロン姿で髪をキュッとひとつに結び、朝食を運んでいる彼女は私の『母』である。
彼女の名前は桐谷奈々美｡ 本当の母親ではない｡
本当の母は私が幼い頃に死んだ。
「ママ、ゆーおねーちゃん、おはよぉ〜」
まだ夢見半分で階段を下りてきたのは、私の『妹』の桐谷美咲である。
奈々美の実の子だ｡
「おはよう｡みーちゃん、お寝坊さんかな〜？お顔洗ってらっしゃい｡」
母(ここからは義母と呼ぶことにする)はさっきほどまでの態度とは違った甘い口調で言った。
「はぁーい」
美咲はトコトコと頼りない足取りで、洗面所へと向かう。その時、
「おはよう」
スーツを来た、長身の男が私の隣の椅子に座った。
彼は私の『父』、桐谷裕也だ｡
美咲が洗面所から戻ってきて、4人とも席に着いた｡
今日の朝食はフレンチトーストだった。
「みーちゃん、どう？おいし〜？」
義母は美咲に言った。
「うん〜おいしいよぉ〜」
まだ寝ぼけているのか、曖昧な口調で美咲はこたえる。
「美咲、良かったな。奈々美は料理が上手いからな〜｡」
「も〜、あなたったらやめてくださいよ〜｡ただ焼いただけじゃないですか〜」
義母は笑いながら言った。
「ごちそうさまでした。」
私は食べ終わって、お皿を片付ける。
「優梨ちゃん、今日もちゃんと片付けて偉いわね｡お行儀も良くていいお姉ちゃんね〜」
義母はやはり甘い口調で言った。
「そんなことないです。」
「優梨｡先週のテスト結果、なんで見せないんだ？」
父が冷ややかな声で言った。
「まだ返されてません...」
「あなたったら、またそんなことを...優梨ちゃんが隠すわけないでしょう？」
義母が庇うように言った。
(本当はそんなこと微塵も思ってないくせに...)
私は知っている。家族にとって私は「邪魔な子」なのだと｡
美咲が羨ましい.....｡
私は自室に向かい、机の引き出しの鍵を開ける。
そこにはまだ赤ん坊だった頃の私と母と父の3人が写った1枚の写真があった｡
写真の向こうの家族はみんな笑っている。
(母さん...なんで私だけおいてっちゃったの？.....)
涙が床を濡らした。
暫く写真を眺めたあと、涙を拭い、また引き出しにしまった。
続く (更新停止中)
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作者名：夜凪 梨花 | 作成日時：2020年5月27日 10時
