剣持警部の殺人（14page） ページ18
「なんていうか…流石としか言いようがありません…」
私なんて、すっかり毒島くんには騙されたというのに…。
明智警視は初めからその仮説を立てていたなんて、だからこそエリート警視と言われる所以はある。
それなのに、私情を挟んで視野の狭い私は刑事としてまだまだだと痛感する。
「すみません、明智警視は犯人である毒島くんを私に任せてくれていたのに私ったら…」
「毒島は言っていました。最初は口うるさかった女刑事が怪我をしている自分に気付いて親身になってくれた…と。その時の君が十神まりなと重なって見えたそうです」
「まりなさんと…」
道理で毒島くんの反応が時々変だと感じたのは、それだったのかと漸く気付く。
剣持警部から聞いた十神まりなさんは、真っ直ぐで優しい性格だったと聞いている。
でも、私は優しいって柄じゃないなと思い、思わず失笑する。
毒島くんと話していた時も、まるで姉弟ケンカのような感じだったもの。
「口うるさかった…は、余計ですけどね。私は剣持警部を犯人扱いされたのが悔しくて言ったまでです。怪我については、なんだかほっとけなかっただけですよ」
「それじゃあ私が怪我をしたら、ほっとけませんか？」
「も、もちろんですよ！当たり前のことを聞かないでください！」
からかう明智警視に少し怒ってみせるも、彼は笑っている。
なんでだろう、少し胸の奥がこそばゆい。
明智警視が珍しく面白おかしく笑っているせいだろうか。
「それなら、その時は君に看病をお願いすることになりそうですね」
再び笑ってそう言った明智警視だが、まさか数ヶ月後に本当にそんなことが起こるなんて、この時の私は想像もしなかった。
その話はまた、先の話となる…。
剣持警部の殺人（15page）→←剣持警部の殺人（13page）
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫亜 | 作成日時：2024年3月24日 2時
