剣持警部の殺人（13page） ページ17
「君は何も出来なかったと思ってるでしょうが、そうじゃない」
「！、明智警視…」
その後、事件を終えて私は大事をとり再び警察病院の病室にいた。
そこに見舞いに来てくれた明智警視が現れ、そう言ったので驚いていると、彼は更に言葉を続ける。
「おそらく、高遠の犯罪計画のシナリオ上に君が毒島を見つける予定はなかったはずだ」
「…確かに剣持警部に変装した男は、私が眠らされる前そのような発言をしていました。ですが、取り逃してしまったことに何も変わりはありませんよ…」
明智警視は私を励ますつもりで言ったのだろうが、申し訳ないけれど気休めにしかならなかった。
いくら彼の不意をついたところで眠らされるようじゃ話にならない。
私はいつも肝心なところで及ばない、それがすごく嫌だった。
いつまでも自分を責めてしまいそうな私に、明智警視はやれやれと肩をすくめる。
「おかげで毒島を動かしていた人間が高遠だと分かったのです。もう少し、自分を高く評価してあげたらどうですか」
「そんなことできませんよ。だって…私は捜査にお呼びじゃなかったんですから」
拗ねたように呟く私に明智警視は目を丸くした。
「もしかして…捜査から外したことを怒ってますか？」
「べ、別に仕事にケチをつけているわけではありません！ただ…私って、そんなに明智警視にとって頼りなかったですか…」
そこまで言って、ようやく我に返る。
これじゃあ高遠遙一を捕まえることができなかった腹いせを、まるで明智警視にぶつけているみたいだ。
一緒に捜査できなかったぐらいで、まるで子どもみたい…。
「すみません、いつも一緒にいることが当たり前のように感じていたので、ついワガママを言ってしまいました…」
「そんな風に思っていたとは知りませんでした。私は、1番重要なことを君に任せたつもりなんですがね」
「え…？」
驚く私を見てクスクスと笑う明智警視。
一体どういうことなのだろうかと言葉を待っていると、明智警視は話し始める。
「私は、個人的には剣持警部のことを疑っていないと言っていたでしょう。ですから、毒島が犯人である可能性も予め考えていたのです。発砲事件のあの時から…」
明智警視が思い出すように言ったのは、毒島くんが自ら発砲事件を起こしたことだった。
まさか、あの時から毒島くんが犯人かもと予測していたなんて…。
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作者名：紫亜 | 作成日時：2024年3月24日 2時
