剣持警部の殺人（12page） ページ16
「な…なんだって？もう1人、男がいた？」
私の言葉を聞いた剣持警部たちが戸惑う。
そんな中、金田一くんが何かに気付いたように焦り始めた。
「毒島…もう一つ教えてくれないか。お前に、この犯罪計画を持ちかけた奴のことを…！」
「犯罪計画…！？」
「アイツは…ボランティアの牧師だ。俺の心を癒すと言って何度か訪れてきた…」
言葉を振り絞るように、毒島くんはその男について話し始める。
湖森さんが手紙を渡さなかったこと、多間木と魚崎が社会復帰したこと、剣持警部があたかも裏切ったかのように、その男は話したという。
復讐に火をつけてしまった毒島くんは、今回の犯行のシナリオを彼に提供したそうだ。
それができる男は、ただ1人しかいない。
「地獄の傀儡師、高遠遙一…！」
その瞬間、眠らされた時のことが鮮明に私の中で蘇る。
男は確かに剣持警部の姿をしていたが、声は別人だった。
今思えば、高遠遙一の声だったと今更気付いて悔しさが込み上げてくる。
拳を握りしめて体を震わせる私を、明智警視が静かに見つめていた。
毒島くんは、ひたすら剣持警部に謝る。
確かに彼がやったことは、決して許されることではない。
だが…その裏で高遠遙一に操られていたことを食い止めることができなかった自分が1番許せなかった。
高遠遙一が毒島くんを利用して今度は剣持警部を狙って襲ってきたという事実。
しかも、自分の手は一切汚さない手で…本当に許せない。
そんな後味の悪さを覚えながら、この事件は幕を閉じるのだった…。
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作者名：紫亜 | 作成日時：2024年3月24日 2時
