剣持警部の殺人（11page） ページ15
「手紙…？一体、何の手紙で…」
湖森さんは当時その手紙を剣持警部に渡したと毒島くんに言っていたそうだが、剣持警部は何のことか知らない様子だった。
それから湖森さんから語られたのは、その手紙の内容だ。
本当の主犯格は多間木と魚崎で毒島くんは彼らに巻き込まれただけなのだと打ち明けた手紙だったのだ。
被害者家族である十神えりなさんと青井刑事は驚く。
更に驚いたのは、毒島くんが被害者のまりなさんを好きだったという事実だ。
それは、本人の口から涙ながらに語られる。
3年前、現場となった毒島くんのアパートで多間木と魚崎がまりなさんに行った犯行を直前まで知らなかった毒島くん。
その際に、毒島くんは自分が今回の犯人であることを認めた。
動機は多間木の親の下に就く毒島くんの父から仕事を奪わせないために、彼らの犯行に加担するしかなかったということ。
受験勉強中、ファミレスで働くまりなさんに会い優しくしてもらったにも関わらず、加担してしまったことを毒島くんは酷く後悔していた。
手紙で真実を語る気になったのは、多間木が裏切ったことによるものだった。
結局、毒島くんの父の会社との契約を打ち切り、会社は倒産し彼の父は今も行方不明のままだという。
しかし、告発した手紙は湖森さんが処分してしまったため、真相は闇に葬られてしまった。
湖森さんは当時、娘が重い病気にかかっていたため手術するには多間木の父である院長の口添えが必要だった。
そのために主犯格は毒島くんのままで処分し、娘の命と引き換えに彼を犠牲にしたのである。
全てを知った毒島くんは、何もかも諦めたかのように項垂れてしまった。
だが、まだ明らかになっていないことが一つだけある。
剣持警部がずっとカンキンされていたのなら、私が毒島くんを見つけた時、明らかに矛盾していることがあった。
「毒島くん、私が貴方を探して見つけた時、もう1人誰かと一緒にいたよね…？それは、剣持警部のスーツを着た男だったわ…。でも、剣持警部はカンキンされてた…」
私は曖昧だった記憶を呼び起こすように毒島くんにそう言った。
どこか必死のようにも見える私を見て、毒島くんの戸惑っている顔が私の瞳に映る。
さっきから嫌な脈が打つ。
それはまるで、本能では分かっているかのように…。
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作者名：紫亜 | 作成日時：2024年3月24日 2時
