露西亜人形殺人事件（27page） ページ2
「はぁ…っ」
「だいぶ落ち着いたようですね」
何度か繰り返す内に浅かった呼吸が安定してきた私を見て、高遠遙一がそう言った。
必死に呼吸をしようとしたせいか、安定した後でも疲れ切った様子を見せる私をよそに梅園さんが高遠遙一に声をかける。
「まったく、緊急とはいえ見せつけてくれるわね。高校生には、ちょ〜っと刺激が強すぎたようだけど」
犬飼くんの居たたまれない様子を見て、クスクスと笑う高遠遙一と梅園さん。
そんな彼女たちの間には、いつのまにか達成感に包まれていった。
「さて、私は彼女を部屋に運んで行きます。梅園さんと犬飼くんは先に大広間の前に向かってください。私も後で向かいます」
「分かりましたよ」
「ちゃんと休むのよ、刑事さん」
高遠遙一に抱き抱えられた私に、梅園さんがそう言った。
なんだかんだで、私の方が梅園さんたちに迷惑をかけてしまったな…。
梅園さんたちが行くのを見送ると、高遠遙一がそのまま私を抱えて歩き出す。
それがまるで当然のようにするので、私はそれが不思議で仕方なかった。
「私に…貸しを作ったつもり…？」
自分にもそんな高遠遙一も許せなくて、思わずそんな言葉が私から出る。
しかし彼は、まるで気にしていないようだ。
「私のせいで辛い過去を思い出させてしまったみたいですから」
辿り着いた私の部屋のベッドに彼によってゆっくりと降ろされる。
私がこんな態度を取っても、昔と変わらない優しさが垣間見えた気がして胸が苦しくなった。
「どうして…今更そんな優しさを私に向けるの？一体、どうして…私の気も知らないで…」
それまでずっと我慢してきた思いが遂に溢れて出てきて、私は思わず子供じみたことを言う。
それに、高遠遙一がどう思ったかまで気は回らなかった。
疲れ切ったせいか、すごく眠い。
早く、金田一くんたちの所に行って想子さんを捕まえなきゃいけないのに…。
半分意識を失った感じで眠りについた私を静かに見つめる高遠遙一。
その口元は薄っすらと笑みを浮かべている。
「君に無駄に植え付けられた正義感が邪魔をしてるんですよ。やはり、明智警視や剣持警部が邪魔なようですね」
何故か2人の名を口にし、私の部屋を後にする。
まるで何か目的ができたかのように、その足取りは軽かった。
「いつか、彼らの命が危ぶまれるようなことがあれば、君がどんな顔をするのか楽しみですね」
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作者名：紫亜 | 作成日時：2024年3月24日 2時
