死にたがりな君の聲を聞きたかった。【歌い手】 (ページ3)

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いち、ページ3

[ゆきむら。side]

ピンポン

今日もインターフォンが鳴る。

｢はーい｣

そして今日もドアから顔を出して君を部屋に通す。

いつも通りうっすらと微笑んだ君。

｢いらっしゃい、葵。｣

コクリと頷いた君は、いつも通りぼくの部屋の汚いベットにドサッと座った。

そして勝手に枕元の水を飲み出す。

いつも通り。

お互いに心を許し合っているぼく達は、いちいちそんなのに許可を求めないし、取ろうとしない。

特に何か用があるわけでもなく、作業が余程切羽詰まってない限り、毎日葵はここに来る。

気まぐれにふらっと来て、気付いたら帰ってる。

それが早朝からの時もあるし、夕方に来て一夜を明かすこともある。

ぼくが寝てたら勝手に上がり込んでくるし、一緒に寝たのに朝居ないこともある。

来た時に傷だらけで泣いてることもあるし、今日みたいに機嫌がいい時もある。

それはお互いね。

なにせ、葵の家では少し問題があっﾄﾝﾄﾝ

｢どうした、葵。｣

ふいに葵に肩を叩かれた。

『昨日の新曲、聞いてくれた？』

スマホのメモ帳に書かれた文字。

｢え？、、、ごめん、昨日葵が帰った後すぐ寝てたわ、、w今聞くな。｣

ぷう、と頬を膨らませて、葵が自分のスマホを操作して、突き出した。

【きみ。Mall0w】

｢なに、今回は恋愛作ったの？｣

サムネの絵が、珍しくほんわかしていた。

そう言うと、何故か少し照れくさそうにドヤって、頷いた。

｢なになに。自信作ですか？｣

『いいから聞いて！！！』

｢はいはいw｣

♪～

｢、、、これ、｣

『ぼくの由貴への想い！』

にこにこ嬉しそうに笑いながらそうメモ帳に書き込む葵に、思わずぼくの口角も上がった。

｢ありがと。じゃあ今度の歌ってみたはこれかな。｣

頭を撫でながら、そう言うと、また嬉しそうに笑った。