取調室 ページ21
高木side
〜取調室〜
俺は日下弥生から事件当時の状況を改めて聞いた後、まずトロフィーについて質問した。
高「ご主人、勤め先の会社が主催の草野球大会で優勝されたことがあるんですね。野球はお好きだったんですか?」
弥「ええ、学生時代は野球部に所属していたそうで。休日は会社の方と練習したりしていました。」
高「ご近所でもご主人の野球好きは有名みたいですね。お宅に行くと必ず草野球大会で優勝した時の自慢話をされたと可笑しそうに話されている方、多かったです。」
弥「会社主催の小さな大会なのに…お恥ずかしい限りです」
高「いやいや、たとえ小さかったとしても4回も優勝されているなんて…とてもお上手だったんでしょうね。」
弥「ええ、まあ。私も娘を連れて応援に行ったこともありました。」
高「そうでしたか。ところで、現場検証のときトロフィーが3つしか無かったのですが、もう1つどこにあるか知りませんか?」
弥「いいえ。部屋もかなり荒らされていたので、物に紛れてしまったんでしょうか…」
高「われわれも一生懸命探したんですが、家の中では見つからなくて…。ご主人が大切にされていたトロフィーです。ひとつだけ無くすとは考えにくい。それでもしやと思って、調べてみたんです……。
そしたら、ご主人の頭部の傷の形にトロフィーの形が見事に一致しました。」
弥「じゃあ、主人はあのトロフィーで殴られたんですか?」
高「はい。あのトロフィー、すべて形が同じなんですね。いや〜、犯人に全部持って行かれてなくて良かったです。今回の事件は衝動的殺人だと我々は考えています。なので、草野球で優勝したことや、そのことを自慢していたことで恨みを買って殺されたとは考えていません。あのトロフィーは、咄嗟に犯人の目についた凶器だったんでしょう。」
弥「そうですか・・・。」
高「お宅に無いということは犯人がまだ持っているか、どこかに処分したかということが考えられます。」
俺はその後も、指紋についての不可解な点、泥棒に見せかけたと思しき偽装工作、遺体隠しについてなど、捜査結果を報告するように丁寧に説明していった。
警察がどこまで調べているのかを伝えることによって、弥生に自分が犯人だとバレるのは時間の問題だと恐怖感を覚えさせる。
弥生はごく一般的な専業主婦で、過去に犯罪を犯したこともない。
逃げられないという恐怖心さえ植え付けられれば、必ず落ちるというのが、伊野尾くんの読みだった。
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作者名:五番地の引きこもり | 作成日時:2020年3月5日 19時