【文豪ストレイドッグス】弱サヲ恥ト言フノナラ 弐

伍拾壱行目 ページ17

応接室を出ると、パソコンに向かっている潤一郎くん以外に数名事務員がいるだけで、他の職員は誰もいなかった

僕は潤一郎くんの隣の席の椅子を借りて腰掛ける

ガタンという音に気づいた潤一郎くんはこちらを向いてへらりと微笑んだ

「おかえり藤村くん 遅かったね」

『…ちょっと、電話がきて』

嘘ではない

たぶん、ぼーっとしていた時間の方が長かったろうけれど

潤一郎くんに仕事の資料を渡され、自分のデスクに戻ると、探偵社の扉がガチャリと開いた

「ただ今戻りました」

国木田さんは扉を静かに閉めると、顔に似合わないスーパーの袋を持って、自分の席に座った

そして、周りをキョロキョロと見回す

「谷崎、敦は誰と調査に向かった？」

「あぁ、はい 賢治くんと2人で」

『…おぉ』

賢治くんと二人か…いいな

賢治くんは純真無垢な僕のとても仲のいい友人だ

何度も賢治くんと調査に行ったことはあるが、持ち前の純粋さで数々の事件を解決している

新人の敦くんの教育係にはピッタリのような気もするけれど……

「何？賢治と！？」

『…何か問題があるんですか？』

「賢治くんは成績優秀で、難事件を何度も解決を」
「大問題だ！」

国木田さんは参ったというようにわしゃわしゃと頭をかく

なんとも言えない表情で、冷や汗をかいている

「賢治のやり方は特有(オリジナル)すぎて参考にならん！だが単純で頭が常春の敦は賢治の仕事手順を素直に信じるに決まって居る！」

『…さすがに敦くんも自分に出来るか出来ないかくらいなら判断できると……』

「藤村、お前は敦を過大評価しすぎだ！…拙いぞ……」

国木田さん、そんなに心配しなくてもいいと思うのだけれど、きっと心配性故なんだと思う

僕は潤一郎くんと顔を見合わせ、へらりと苦笑いした

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