滲んで 【2j3j】 【短編集】

またのご来店を　【fsm】 ページ10

『はぁ…今日も疲れた』


ブラック企業に務めている私は大体帰ることができるのが深夜
こんな会社今すぐにでも辞めたいのだが、他の会社の面接を受けてもことごとく不採用の為、今の仕事をやるしかないのだ


『…あれ？ここ何処、』



気がつくと知らない場所にいた
まずい、私は極度の方向音痴で昔から両親と一緒に何処かに行ったとき毎回迷子センターによくお世話になったものだ



とはいえ此処には迷子センターなんてものはない
しかし、こんな深夜に開いてる店なんて、


「ﾆｬｰﾝ」



『ひゃっ！？』



背後から突然鳴き声が聞こえてビビる
後ろを振り返ると、え、狐？


尻尾はごわごわで耳がぴーんとたっている
けどさっきﾆｬｰﾝって鳴いていたから猫なんだろうけど


流石にこんな真っ暗な場所でホラゲ展開はきびいぞ、おい


すると猫(？)は私の下を通るとまたﾆｬｰﾝと鳴いた



…まるで着いてこいと言ってるみたい
何処かに連れて行ってくれるのだろうか

私は藁にもすがるような思いで猫について行った



暫く歩くとぼんやりと明かりが灯っている店があった
和風のこじんまりとした店だ
猫(？)はその店の前で足を止めると
ｶﾞﾘｶﾞﾘと戸を引っ掻く



するとガラッと戸が開いた
「ちょっと猫さん！扉を引っ掻くのやめてくれって言っ…ありゃ？お客さんですか？」


出て来たのは20歳くらいの青年で
猫を抱き抱えるとニカッと笑う



『いらっしゃい、ようこそ
　伏見食堂へ』

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