遠慮 ページ11
倉持「いよいよか準決勝か」
予選も勝ち進み
あと二戦でインターハイ
由宇日「なんか必死すぎてあっという間だったな」
少しはにかみながら話す莉実の姿を見ると一年の時を思い出す
莉実だけじゃない、仲間たちがここまで必死に戦ってくれている
一年前の沢村くんと莉実の姿が重なって見える
御幸「打撃と走塁練習は入れるようになったみたいだな」
A「うん。鈍った感覚を取り戻すのに必死かな」
石灰を砕く治療のおかげで肩の痛みは取れた
久しぶりにバットを握った時は、ミートする感覚がなくて驚いた
倉持「打撃と走塁では試合も出られるんだろ？」
A「…どうだろうね」
由宇日「ちょっと！あんた試合中は早く出せよって顔で監督睨みつけてるくせに！笑」
倉持「なんか想像できるわ！笑」
A「そうだけど…怪我が良くなったからって戦力として使われるのは別の話だよ」
由宇日「そんな弱気でどうするの！？」
A「…」
ここまで必死に戦ってくれた仲間をずっと見てきた
自分が他の仲間と同じように戦力として動けるか不安もある
御幸「負ければ終わりの勝負をしてんだ。調子の良い選手から使うのは当たり前だ。」
由宇日「それは…！そうだけど…」
御幸「それを本人が一番分かってるじゃねーの？」
的確な言葉に私たちは何も言えない
御幸「だけど選ばれた以上、遠慮とか後ろめたい気持ちとかいらない」
A「…！？」
御幸「どんな事情があろうとどんな状況でも
こいつならって思って監督は選手に託す。
だから、お前も選ばれた時は堂々とプレーしろ。」
まるで心の中を読まれている気がして
由宇日「御幸…」
倉持「ﾌｯ…(ちゃんと分かってんじゃん)」
A「うん…」
そう答えるしかなかった
ｶﾞｼｶﾞｼ…
頭を撫でてくれる手に
御幸「大丈夫だよ。今までのお前の頑張りを見てりゃ誰も文句は言わない。
少なくとも由宇日は誰にも文句言わせねーよ。
な？由宇日」
その優しい眼差しに
由宇日「あたりまえじゃん」
倉持「みんなお前の復活を待ってるんだぞ」
A「…ありがとう」
同じ境遇で戦ってきた仲間たちの優しさに泣きそうになった
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作者名：春春 | 作成日時：2021年9月29日 22時
