インコース ー御幸サイドー ページ4
倉持「あいつ最近投げてないよな…」
夏休みの期間
Aにとっては、とても厳しいものだった
試合ではすぐにベンチに降ろされたり
「なんだ！その目は！！！お前、あの日ことをもう忘れたのか！！！！！」
練習中こっちのグラウンドまで聞こえる怒号で
監督に胸ぐらを掴まれたり
先輩にマウンドから引きずり下ろされたり
市川「もう投げなくていい」
隣のソフト部のブルペンでは先輩の厳しい言葉に
ついにAは泣きだした
その後何を話していたかは分からないけど
変わりたいと気持ちが焦せりとなり
裏目になってプレーにもでてしまう
それに気になることが…
ーーーー
高島「トラウマね」
御幸「？」
スコアブックを借りにいくついでに礼ちゃんに話してみると
あの日、決勝戦で打たれたツーランはインコースのライズボール
それがトラウマとなりインコースに投げ込めない
それは分かる
御幸「あいつ打撃の時、インコース来ると決まってセフティーかボールを叩くんだよなー」
野球してた時、インコースはあいつの得意球だった
ボールを当てるアウトコースを避ける
その心理をついたインコースの狙い打ち
元々スイングスピードの速いあいつなら、インコースは勝負できるはずなのに
高島「彼女、実は一度ソフトボールを辞めようとしたことがあるの」
御幸「え…」
それは中学最後の大会でおきた悲劇
試合で受けたデットボールで怪我
それをきっかけにソフトボールから離れ
数多くの推薦は一気に取り消され
ソフトボールの道を閉ざされかけたことがあったと
このきっかけもインコース…
高島「考えられるとしたら…それかも知れないわね。まさか、打撃にも出てしまうなんて…」
そんなこと隠してたのかよ
あいつにどれだけ試練が来るんだよ
高島「だけど、決勝戦最後の打席で見せたツーベース。本人は気付いてないけど、打ったボールはインコース。あの子本来の力が発揮された場面だった。送る中心の2番なら通用しても、出塁やここぞの場面で一本を求められる1番では、彼女のトラウマがより鮮明にでてしまう」
でも、監督と先輩があいつに厳しく向き合ってる理由が分かった
あいつはとっくにチームの戦力で
チームのために仕事できるのは当たり前で
本人も分かっていないトラウマに向き合わせようとしている
さらに上へ…上へ…更なる高みを求められている
それだけ大きな存在なのかよ…あいつは
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作者名：しゅんしゅん | 作成日時：2020年6月28日 10時
