【d!】春宵【短編集】 (ページ48)

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「っはぁ！」

　息苦しさと体の芯から冷えていく感覚でどうにか呼吸を再開する。バシャバシャと滑稽に踠く姿を、警官らしき男が見ていた。

「また君か、そろそろあの橋から飛び降りても死ねないって理解しなよ、迷惑なんだよ」
「…すんません」
「次やったら逮捕するからな」

　迷惑そうにそう怒鳴り散らして、警官はさっさと仕事に戻る。別にこっちは迷惑をかけてるつもりはない。放っておいてくれればいいのに。

　はじめての恋だった。彼女は僕の隣でいつも笑っている、可愛くて大切な女の子だった。二つ年下で、学校で会うと大きな声で僕を呼ぶ、可愛い大切な幼馴染。

　でも今の関係を壊したくなくて、僕は違う女の子とたくさん付き合った。彼女は好きだけど、汚したくなかった。もう少し大人になったら想いを告げよう、なんて逃げていた。
　でもあっけなく彼女は死んだ。僕と帰っている時、車が歩道に突っ込んできて彼女はいなくなってしまった。

　それからというもの、死にそうになると彼女に会う。そしてたわいもない会話をして、彼女が助けてくれるのだ。どんなに世界が眩しくても、カラフルでも、彼女がいないと戻っても意味無いのに。……嗚呼、今日もあの子の元に行けなかった。

「……次はどこから会いに行こうか、Aちゃん」

End.