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そう言いまた私の指に舌を這わせる。スルメを触ってない指も、隅々まで堪能されていく。それと同時に挑発するような眼差しで見上げられたら、大抵の女はイチコロだろう。大抵の女には勿論私も含まれている。


「嫌だったら力一杯殴ってくださいよ」
「なぐるってな……!?」


 その唇が眼前まで迫ったかと思うと、それは私の唇に重なってぬるりと動いた。唇で唇を啄まれる。ビールの苦味も、スルメの塩気も、浮わついた恋心までも食べられてしまった。

 反射的に抵抗した手はゾムくんの胸板を弱々しく押す。嫌なわけない。密かに恋心を抱いていた相手に、キスされて嫌なわけないじゃん。それでもここで簡単に受け入れてしまったらただの尻軽女に思われてしまいそうで、見せかけの抵抗を少し、彼の胸に渡した。


「やから、嫌やったら殴れって」


 怖いほど見つめてくる瞳は狂おしいほどの愛を伝えてくる。その視線から逃げるように目蓋を閉じた。


「そんなんやから心配なんすよ」


 その心配は不必要だ、と口に出せない代わりに胸を押していた手で腕を掴んでみる。


「もう、知らん」


 べろり、と唇を舌で撫でられたら最後。無理やり口をこじ開けられ、秘密の気持ちが漏れ出てしまった。




End.

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作者名:すこ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home  
作成日時:2022年3月9日 11時

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