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返事に違和感を感じたのか、チーノが振り返って顔をしかめる。
普通泣いてる女の子にはっきりと不細工なんて言う?
だんだんイライラしてきた。


『チーノだって、今凄く悪い顔してるからね!』
「はいはい……」
『もう、手、離してくれない?』
「ちょっと寄り道してええ? 俺行きたいところあんねん」
『ねえ私の話聞いてた?』
「万引き、見つからないように助けたん誰やったっけぇ?」


 彼の特別悪い顔に、涙も反論も引っ込んだ。
後ろを振り返っても追ってくる店員はいなくて、改めて助けられたのだと実感する。

 引っ張る手は家とは真逆の方向へ向かう。
隣町なのだからそろそろ子供は家に帰らないと、夕飯に間に合わないと思うんですが。
と少し遠慮がちに言うと、万引きする子はそんな事気にしないやろ、なんて返ってきてまた黙るしかない。
なんなのこの男、私の弱みを握ってそんなに嬉しいわけ?


「おばちゃーん! こんばんわ!」


 見たこともない狭い道に入ったかと思うと、薄暗い小さなお店の中に突然大声で挨拶をしたチーノ。
あれだけ頑なに離さなかった手をあっさり解放して店の中に入っていく。
急に一人にされても困るよ……私はどうすればいいの?
いや、帰ればいいんだろうけどさ。
でも勝手に帰ったら、チーノが怒って学校にチクるかもしれない。

 一旦落ち着いて店の中を見てみると、子供の頃親に買って貰ったお菓子がずらりと並んでいた。
それだけではなく、コンビニじゃ見たこともない小さなお菓子も山盛りになっている。
破格の値札を見て、これが所謂駄菓子屋だと理解した。
薄暗い店内に入る気になれないし、帰る勇気もない。
とりあえず外のベンチに座ってチーノを待つことにする。


「ほい、Aラムネ好き?」
『ひぁっ!』
「俺の奢りでええよ、むふふ」
『おごっ……やだ、これ以上貸しを作ったら見返りが怖い』
「見返りなんてなんも求めんよ、俺の事何やと思っとんの」


 けらけら笑いながらラムネの瓶を渡してくる彼は、絶対このまま終わる人間では無いはずだ。
パシりか、財布か? 何にしても怖い。
タダより高いものは無いっておばあちゃんも言ってたし。




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作者名:すこ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home  
作成日時:2022年3月9日 11時

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