【d!】春宵【短編集】 (ページ34)

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　ギラリと光る瞳はいつぞやと同じだった。
でもそんな瞳で見つめられても、血濡れた唇で口づけを交わしても恐怖は無い。
もしかしたら、そう躾られてしまっていたのかもしれない。
長い間一緒に過ごして容姿が全く変わらない彼の言葉は全て今日の為だったのかも。

「美味しいよA、最後の一滴まで俺が食べてあげるから。そうしたら、早う生まれ変わってな？どこに行っても誰に生まれ変わっても、絶対見つけてやるから。そんでまた、一緒に楽しく暮らそう？」
『じゃあ、なんで私を殺すの……？』
「だって……俺以外の男を知る前に食べなきゃ、美味しくないやん」

　笑顔。
少年のような満面の笑み。
この顔に騙されてきたけど、本当の彼は一体何歳なのだろう。

　ぺろり、私の皮膚の弱い所を舐めては頭の中をロボロ一色にしてくる。
他の事を考えさせまいと、ずっと視線を合わせながらも私を愛してくる舌は止まらない。

「俺、Aしか食べへん。やから、早う生まれ変わってな？Aの笑顔さえ見られれば空腹も忘れられる。俺の名前を呼ぶ甘くて可愛い声で、空っぽの胸がいっぱいになるんや。すごいやろ？これが、愛や」

　かぷり、かぷりと甘噛みのように咬まれた場所は赤く跡を残している。
そうか、ロボロって吸血鬼なのか。
だから日なたに出なかったのか、ニンニク料理も食べないし、肌も白くてモデルさんみたいだし……だから見た目が高校生の時から変わらなかったのか。
そっか……今更気づいても、遅いけど。

『それでも、好きだよ、ロボロ』
「おん、そうやろ？俺も好きやで……今までも、これからも」
『じゃあね、またね、絶対見つけてね』
「約束や」

　最後に軽い口づけをし、ロボロは私の首元に顔を埋めた。

「大好きやで、また来世で」

End.