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今思うと別に、距離をとらなくても良かったんだろう。
残念やね、別の所に新しく作ろうや、なんて話して二人だけの秘密を続ける事は出来たのだ。
それでもそうしなかったのは、子供故に秘密基地を壊された怒りをどこにぶつければ良かったのか、全くわからなかったからだと思う。
秘密基地の全ての記憶に蓋をして、お互い見ないフリをすれば少しは痛みも悲しみも忘れることが出来た。
でも完全に忘れたわけじゃない。
大人になった今も、この場所に来るとちゃんと胸が痛む。
月日は関係ない。
俺らはあのふたりぼっちが楽しくて、大切で、特別だった。
「手、繋いでもええか?」
「え? なんで?」
「あの頃みたいでええやん、それでこれまでの事いっぱい話してや。大学の事とか、今の仕事の話とか」
「じゃあ鬱くんもね、色々教えて? SNSでしか知らないけど、女の子といっぱい遊んでて楽しそうじゃん」
笑う彼女が夜なのに輝いて見えて、つい握った手を離してしまった。
俺はこの手を易々握れるほど綺麗じゃない。
小学生の無知な自分とは変わってしまったんだった。
女は食い物、とでもいうかのようにたくさんの女の子に手を出して、そして勝手に手放してきた。
別に理由なんてない、女の子という存在が好きなだけだ。
でももしかしたら、心の奥底でずっと彼女を求めていたのかもしれない。
あの秘密基地で過ごしたあの安らぎをもう一度感じたくて、女の子を求めていたのかも。
そう思ってしまうぐらいには、今俺は彼女を求めている。
「べつに……彼女が嫌やったら女遊びもやめるよ、いつでも一途になるし」
「んー、もし私の彼氏が浮気ばっかりだったら嫌だけど、鬱くんは別にいいんじゃない? 割と小学生の頃からそうだったし」
「えぇ? 俺そんな子供やった?」
「うん、私の事好きって言ったり、隣のクラスの子と手を繋いでたり、結構ね」
「うっそ、全然覚えてへん」
「……私とは真逆だったから、鬱くんが好きだったのかも」
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作者名:すこ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home
作成日時:2022年3月9日 11時