彼女は綺麗だった/ut ページ24
彼女は綺麗だった、なんてドラマのタイトルのような言葉が浮かんでは、いやいやと頭を振って雑念を消す。
綺麗だった、だが今は更に綺麗だ。
あの頃より大人になった彼女は経験を纏ってより色気を増した。
「こっちだよね……結構道が残ってる」
「もしかしたら今も、そこら辺のガキが遊んでるんちゃうん?」
「そうだったら嬉しい」
大安吉日、久しぶりに参加した同窓会で俺は幼馴染みのAと再会した。
最後に会ったのは成人式だったか、それ以降地元を離れてしまった彼女とはSNSぐらいでしかやり取り出来なかった。
直接会って会話をすれば不思議とあの頃の思い出や気持ちが甦ってくるもので、酒の勢いのまま会場を出て懐かしい場所へと向かっている。
低いヒールで土を踏みしめ、危なっかしく先を歩く彼女の指先に触れられないのは、きっと思い出が美化されているから。
いつもの俺だったらとっくに指を絡めて、キスまで持っていけているのに。
「……あ」
「あー、ここか。そうか、そういえばそうやったな」
「忘れてた、潰されたんだ」
実家の近くの山の中、誰も来ない静かな場所に段ボールや木の棒で作った秘密基地。
小学生の俺らはそこにお菓子やゲームを持ち込んで、二人で朝から日が暮れるまで遊んでいた。
家にいるよりここでAと好きな事をして遊ぶ方が気楽で好きだった。
今思えば、男とふざけながら遊ぶ事とも女とドキドキしながらデートする事とも違う、のんびりとした空気に癒されていたんだろう。
それが突然、本当にいきなり全てを撤去されて俺らの秘密基地は終わった。
「そっか、工場が出来てたんだ。だから撤去されて、立ち入り禁止になったんだね。あれ以来来てなかったから知らなかった」
「俺も今初めて知ったわ……あの頃は悲しくて悔しくて、その気持ちをどこにぶつけてええかわからへんくてここに近寄らなくなったもんな」
「私たちもあんまり話さなくなったし」
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作者名:すこ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home
作成日時:2022年3月9日 11時