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わけがわからず後ろを振り向くと、私を捕まえようとしていた男が真っ赤になって地面に転がっており、返り血を浴びたフードの男はニヤニヤ笑っていた。
黒猫が歩きだし、私の足に体を擦りつけ、そのまましゃがんだフードの男性の肩に飛び乗る。
『え、貴方の猫ちゃんなの……?』
「オレの友達やけど」
『これも、貴方がやったの……?』
「まあ、目障りやったし」
『……助けてくれたんですか?』
「だからそう言っとるやん」
見た目が怪しくて疑ってしまったけれど、状況証拠は揃っている。
しかも猫が懐いているんだから、悪い人ではないだろう。
私はお礼を伝え、フードの男性に着いて行くことにした。
彼はゾムさんというらしい。
ここら辺に住んでいるみたいで、迷路のような路地裏をスイスイ進んでいく。
黒猫ちゃんの事は「ネコ」と呼んでいるから、飼い猫ではないのかもしれない。
私が猫を追いかけて迷い込んでしまったと伝えると、ネコ可愛いもんなぁしょーがないよなぁ、なんて言いながら肩に乗っているネコちゃんと戯れていた。
辿り着いたのは小さなテント。
ネコちゃんは肩から飛び降りて一目散にその中へ入った。
「ここに入ってきたんはコイツのせいでもあるし、その膝消毒したるからそこ座り」
『え、大丈夫です、このくらいは全然』
「ん? 何遠慮しとんの、血ぃたらしといて」
『助けていただいたのにそんな、よくばりな事出来ません』
「なら無理やり押し倒してもええんやで」
ワントーン下がった声に驚いて体が硬直する。
でもすぐに「冗談やで」とケラケラ笑いだしたゾムさんにほっとした。
低い声は圧があって怖かった、本当に力でねじ伏せられるかと思ったくらい。
素直にテント傍にあった椅子に座ると、テントから消毒液をもったゾムさんが私の傍にしゃがむ。
改めて自分の膝を見ると、結構酷く擦ってしまったようだ。
恐怖でそれどころではなかったけれど、こうやって目で見てしまうと痛みが遅れてやってくる。
「染みるやろうけど我慢しいや」
『はい……っ!』
「……ん、偉い偉い」
軽く頭を撫でたゾムさんの手は大きくて荒れていて、お父さんの手とは全然違った。
でもその温もりはさっき私を襲おうとした男とも違う。
きっとゾムさんはいい人だ、私はこの人を信じることにした。
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作者名:すこ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home
作成日時:2022年3月9日 11時