【d!】春宵【短編集】 (ページ17)

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テレワーク/syp ページ17

『え、まじ？』
「おん、ついに俺もテレワーク」
『まじか……』

　ご時世的にいつかは来ると思っていた。
でもそのいつかが現実になると、嬉しいような困ったような。

　外資系の会社でデスクワークをしている彼は、少し前まで業種的にテレワークは厳しいと言っていた。
逆に私はデザイン系の個人事業主、家での仕事が主。
彼がテレワークになるということは、一日中一緒に居られるという事だ。

「やから、その間は夕飯一緒に作ろ」
『……え？』
「いつも作ってもらっとるから、こういう時は俺も……って思ったんやけど、何その顔」
『……ショッピ君、料理出来るの？』
「おま、俺の事なめすぎやろ」
『いひゃい！ほっぺ！いひゃいってびゃ！』

　一緒に居られるという事は素直に嬉しい。
だが、アパートの一室で二人がテレワークするのは流石に厳しいだろう。
部屋を分けるとすればリビングと寝室、二部屋しか無い。
ネット環境の良いリビングはショッピ君に使ってもらうとして、私は寝室か……。

　寝室が嫌というわけではない。
寧ろ居心地が良く、日光がそこまで入ってこないあそこはパソコン作業に向いているだろう。
でも、一つだけ問題がある。快適で熱中しすぎてしまうのだ。

*

「……ええ、それは……」

　とうとうテレワークが始まって、ショッピ君はリビングで仕事をし始めた。
ビデオ通話で会議もするらしく、上半身スーツ下半身スウェットという面白い格好でパソコンとにらめっこしている。
飲み物を取りに行った時丁度取引先と電話していたらしく、仕事の顔をした彼をまじまじと見ることが出来た。
あ、寝癖ついてる……まあいいか。

　私といる時と全然違う彼。
お堅い敬語も、滅多に掛けない眼鏡も、やけに早いタイピングもビジネスマンらしくて格好いい。
私の彼氏、格好いい。

『いいものをみた……』

　寝室に戻り、自分のパソコンと向き合う。
この胸の高鳴りをそのまま仕事にぶつけよう。
今ならいいものが出来る気がする！

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