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「これ、久しぶりに会えたしAにプレゼント」
「え? これ……中見ていい?」
「ええよ、そんな大したもんやないけど、かわええやろ?」
「ホントだ、靴の形の缶に……飴ちゃん?」
「……プレゼント、や」
今さら約束がどうとか覚えてるのはオレだけやろうし、言うのもなんだかカッコ悪い気がして口を閉ざしてしまった。
彼女は缶とオレを交互に見て、少し顔を赤くさせる。
……お? 思ってたのと違う反応や。
「も、しかして……チーノ君、あの約束覚えてた?」
「え、そっちこそ覚えてたん?」
「うん忘れてないよ!」
「そか、忘れてへんかったか……」
「あれが実質最後の会話だったもん、忘れられるわけないよ」
「でも、調べてみたら靴をプレゼントする意味が最悪やってんな! それでどーしよーって考えた結果がそれ。白い靴の缶に入った飴ちゃん、どうや頭ええやろ?」
「……」
缶の蓋を開けてまじまじと飴を見つめるAに嫌な予感がする。
あれ? 飴嫌いやったっけ?
あの頃は一緒に食べてた気がすんねんけど、正直昔過ぎて詳しくは覚えてへん。
アカンかったらどないしよう、結構考えて選んだし、待ち合わせギリギリまで並んでやっと買った一缶なんやけど……。
「靴の意味を知ってるってことは、あの、飴の意味も知ってるんだよね……?」
「あ……」
飴をプレゼントする意味、勿論そこまで考えてのプレゼントだ。
でも照れくさくて自分から言えないしAが知らない前提で選んだから、この反応はまずい。
「そっか……」
「あ、の、キモイとか思ったら捨ててくれてかまへんよ、」
「ううん、そんな事思わない……ふふ、そっか」
驚いた顔をして何回か頷き、それからまた目が無くなるほど笑う。
あの時靴をプレゼントするといった時と同じ、甘やかな笑顔で俺の名前を呼ぶAの手が、控えめにオレの手に重ねられた。
End.
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作者名:すこ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home
作成日時:2022年3月9日 11時