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「よっす」
「わっ!? チーノ君!」
「はは、驚きすぎや」
デート当日、待ち合わせ場所にいた背中はこの間見つめたものと一緒で嬉しくなった。
記憶の中の彼女とサイズこそ違うが、立ち姿や顔に面影があって安心する。
こういう時に大きな花束でもプレゼント出来たらかっこいいんだろうけど、オレにはそんな事をする度胸はない。
「にしても、チーノ君大きくなったね」
「そんなんお互い様やろ」
「いや、私達頭一個分違うじゃん」
自分の頭のてっぺんから手のひらをスライドさせてオレの首に軽くチョップしたAは、オレの変なうめき声を聞いて楽しそうに笑った。
可愛い、相変わらず本気で笑うと目が無くなる。
「とりあえずご飯行こうや、あっち」
「チーノ君オススメのお店?」
「そ、オススメ」
一度下見しただけの思い入れもない店だが、ネットの口コミも良く下見で食べた料理も悪くなかった。
今日は失敗出来ないのだ、見栄ぐらいオレでも張る。
そこからは、完璧なランチデートになったと思う。
メニュー決めから料理を待ってる間にいろんな事を聞けた。
なんでも最近彼氏に振られたらしく、忘れる為に街コンへ参加したらしい。
浮気現場に遭遇して修羅場だったんだよーと笑う彼女はオレの知らない、大人の笑い方をしていた。
そんな辛そうな顔をさせる奴とは別れて正解や、オレなら一生浮気なんてせん……と口が滑りそうになったタイミングで料理が運ばれてきた、ナイスタイミングやシェフ。
正直、味は覚えていない。
彼女の笑顔から目が離せなくてそれどころじゃなかったんや、ごめんなシェフ。
「あー、美味しかった!」
「な! 男同士じゃこんなところ来うへんから、美味しすぎてびっくりしたわ」
「ん? 行きつけじゃなかったの?」
「あ! いや、そう! 行きつけやけど!」
「……ああ、彼女さんと来るのか」
「いやいや彼女も居らんよ……あ、」
存在を思い出して、鞄から小さな紙袋を出す。
紙袋にはデフォルメされた白いヒール靴のイラストが描かれていて、中には飴が入った小さな缶。
オレが必死に考えて考え抜いて、一週間かけて出した答え。
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作者名:すこ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home
作成日時:2022年3月9日 11時