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ああ、どうしてよりにもよってこんな所で、こんな奴らの前で、忘れられない彼女に再会してしまったんや。
「チーノ……おいチーノ、知り合いか?」
「は、い、幼稚園の時の友達です」
「幼稚園!? よく覚えとったな」
「初めまして、僕はチーノ君の大学の先輩で鬱っていいます、よろしゅう」
コネシマさんも大先生も彼女達に興味津々で、一方的に話しかけられて彼女は苦笑いをしていた。
ああホンマに、なんで今日再会してしまったんやろ。
目の前の彼女の瞳はまるでオレを映していない。
なんで、なんで。
あの頃の気持ちがふつふつと甦る。
「あ、もう時間無いみたいなので他のところ行きますね」
「もうそんな時間か!」
「これ僕の連絡先、いつでもいいから連絡しい」
二人から逃げるように立ち上がる彼女と友達。
感動の再会もこんなあっさり終わるんやな。
何も話せずに、今度はオレが彼女を見つめ続けて、終わる。
「チーノ君」
「ん……え、ちょ!?」
「またね、チーノ君」
これが本当に最後だろう、と瞳に焼き付けてたら近寄ってきた彼女。
鞄から何かを出して、オレの胸ポケットにそれをねじりこんだ。
勢いに驚いていて抵抗も出来ず、言及出来ないまま彼女を見送る。
その背中が見えなくなるまで見つめて、それからゆっくりと自分の胸ポケットを確認してみる。
ねじり込まれたその紙は、どうやら彼女の名刺らしい。
オレは街コンが終わると先輩達を置いて早々に帰宅し、彼女の名刺に書かれていた電話番号に掛けた。
こんなもの勢いだ、久しぶりに会えた喜びに背中を押されてデートのお誘いをした。
彼女は電話越しに笑い、来週末の昼間を提案してきて、オレは間髪入れずに了承した。
ああ、なんて事になったんや。
忘れられへんかった彼女ともう一度会える。
お互いいい大人や、もしかしたらもしかしてしまうかもしれへん。
そうや、あの時約束した靴をプレゼントしよう。
この十何年間一度も忘れへんかったよ、とサプライズで。
そう決意して何気なくスマホで「プレゼント 靴 意味」なんて検索したら、とてつもなく悪いジンクスがヒットしてしまった。
踏みつける? 私の元から去ってくれ? そんな事微塵も思ってへん!
小さな頃のオレ、なんちゅう事を言ってくれたんや……。
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作者名:すこ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home
作成日時:2022年3月9日 11時