君はアイドル/sha ページ11
「今週の土曜とか、どう?」
「え、いや、あの、」
「空いとる? じゃあ一緒にデートしようや」
昼休み、廊下を歩いていたら聞こえてきた会話。
なんてことない、遊びに誘うその会話に俺の心臓は跳ねた。
それは聞きなれた二つの声で、片方はダチの大先生。
いつものように女の子を口説いてるんやろう。
でももう片方は、受け流せるほど薄い関係ではない。
「ちょっと待てや大先生、今なんて言うた?」
「何やシャオロン、邪魔すんな」
「するわ、お前見境なく声掛けやがって」
咄嗟に二人の間に入って会話を中断させた。
コイツはホンマ誰でもええんか、この前はギャルをナンパしてたやろが。
「お前も、嫌ならちゃんと言わな。こういう男ははっきり言わへんと諦めてくれないんやで?」
後ろに隠したAにも、なるべく優しい声でそう言葉を掛ける。
うめき声しか返って来うへんという事は、ガチで大先生にビビっとるやん。
この男は女が委縮しとる事もわからんのか馬鹿野郎。
「しゃ、お、ちゃ」
「怖かったやろ、この眼鏡見た目は賢そうやけど中身なんも詰まってへんねん」
「そんなことないわ、テストの点はお前より上やし」
「今回はな!? 前回は俺の方が上やった!」
ギャーギャーと騒ぎ始めると、後ろの存在がどんどん小さくなっていく。
あかん、いつも通りに大先生と喋ると大きな声が出て、コイツがもっとびびってしまう。
はよここから離れんと、というかこの眼鏡から離さんと。
「あんな大先生、コイツ今週の土曜日は俺と遊ぶ約束しとんねん」
「はあ? じゃあ日曜日は?」
「俺という先約が入っとる」
「じゃあ来週」
「土日とも俺とデートやし。あ、見たいって言ってた映画来週公開やろ? 見に行くか」
「う、ん」
「はい残念〜」
後ろのAの手を握ると、予想以上の力で握り返してきた。
いつもなら人前で手を繋ぐなんて恥ずかしいってやんわり断ってくるのに。
こんな状況だが学校の廊下で、人の目がある所で触れ合えるのは純粋に嬉しい。
「何なんお前、珍しく邪魔してきて……もしや嫉妬か?」
「はぁ? 嫉妬に決まってるやろ」
「……え?」
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作者名:すこ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home
作成日時:2022年3月9日 11時