崖っぷちホテル！ (ページ43)

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episode 2-22 ページ43

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-その日の夜-(Night of the day

江口「なぁ…ちょっと話さねぇか？」

レストランを通りかかった宇海に江口はワインを持って見せて言った。

宇海「いいですよ。」

宇海はにっこり笑ってそう答えた。

江口は椅子に座り、江口はワインを注ぎながら口を開いた。

江口「俺さぁ…裕司と環境が似てんだよ。
うちも親父と2人だったんだけど、
ある時、仕事でミスして帰ってきた親父が、俺が作った料理を"美味しい美味しい"って言って泣きながら食べてくれたことがあって…。
俺は料理ができればいい。美味しいと言ってもらいたい。それだけだ。」

宇海「総料理長に戻ってもそれは変わらないでしょう。」

江口「…いやでも、そのことを忘れてたんだよなぁ。そういう気持ちを。
前の総料理長が辞めさせられて、ところてん式に俺が総料理長になって。
だから、まぁ…いい薬だ。

だいたいそういう意味であんた俺を降格させたんだろ？」

宇海「…どうでしょう。」

江口「あんた…なんか怖ぇよ。
何をどう考えてんのか知んねぇけどさ。
Aの才能だって1発で見抜きやがって。」

江口はタバコを口にくわえて火を付け始めた。

宇海「すごい人に出会うと、ワクワクするだけです。」

江口「ほお〜。」

宇海「今日もね、私はまたワクワクしました。」

立っていた宇海はそう言いながら江口の隣に座った。

江口「支配人か。」

宇海「今の世の中って、当たり前のことって言い難いじゃないですか。」

江口「…あんたが世の中とか言うと不思議な感じがするな。」

宇海「でもあの人はとても当たり前のことを当たり前のように言ってのけた。真っ直ぐに。
それっていちばん難しいことだと思うんですよ。」

江口「うん、まあな。」

江口がそう言うと宇海が江口にグイッと椅子ごと近づいて言った。

宇海「あの人…もしかしたら怪物かも知らないですよ…。」

江口「まさか。」

宇海「あ、今度Aさんとの話詳しく聞かせてください。」

江口「なんでだよ、嫌だよ。
…近いなあ。」

宇海「いいじゃないですか、たまには。」

宇海はそう言って笑った。

episode 2 END

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