柊の不安 ページ36
ヒロインside
「雷門の選手も中々だけど、あの監督侮れないね。僕達はあの人に勝てるかな。」
「野坂さんはここまでの雷門の手の内をすべて見切ってらっしゃるじゃないですか。王帝月ノ宮は負けることなどないでしょう。」
西蔭は随分野坂を買っているようだ
だがそれは、その油断は危ないな
それに我が校のサッカー部は
「負けることがない、ではなく負けることができないんだ。…王帝月ノ宮は。」
その言葉に
まるで静かな水面に石を投げ込んだ時にできる波紋のように
私の心に不安を広がらせた
「ふふふ、星章に雷門、全国で会うのが楽しみだね。」
「…そうですね。？」
ピピと西蔭の着信音が響く
『…西蔭、せめてマナーモードにしろよ…。』
「野坂さん、竹見がもめごとを起こしたようです。」
竹見が？
「自分は一足先に戻ります。…先輩はどうしますか。竹見と仲良かったでしょう？」
戻って話を聞きたかったが
野坂の発作がそろそろ来る
『…いや、野坂と帰るよ。』
「…うん。だから、そっちは頼むよ。」
「僕は稲森君や灰崎君にヒーローインタビューでもして帰るよ。」
西蔭は去っていった
『野坂、大丈夫か？フラフラじゃないか。ほら薬。』
「ああ、ありがとう蓮。」
最近発作の頻度も増えた上
薬を飲んでも効果が薄い気がする
彼に残されている時間は…！
私はギリィと歯を食いしばった
「心配しないで、僕は大丈夫。」
そう言って立って歩いたが
「うっ！」
倒れた
『ほら、言わんこっちゃない！』
私は倒れた野坂に肩を貸した
「ごめんね。」
『これくらいで謝るな。』
私はふっと笑って立った
「大丈夫ですか！？」
おや？
杏奈さんが走ってきた
そうか倒れた野坂を心配して
『杏奈さん。』
「え！？蓮さん！？」
「それにこの人、野坂君？」
「君は確か、前に先輩が言ってた…。」
『杏奈さんだよ。』
「そうそう。杏奈さんだ。」
「あの、蓮さん。彼大丈夫なんですか？」
『杏奈さんは可愛いい上に優しいな。心配しなくても私が連れて行くよ。』
私は杏奈さんに野坂を会わせたくなかった
それが嫉妬なのか分からなかったが
もしかしたら私の存在を脅かす女だと
本能で感じ取っていたのかもしれない
「心配してくれてありがとう杏奈さん。」
野坂が微笑みながらお礼を言った
「先輩も、もう大丈夫ですよ。」
『ほんとか？無理はしてないな？』
「ふふ、先輩は心配性ですね。」
『…お前の大丈夫は信用できないからな。』
私と野坂はそのまま去った
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作者名：おこめ | 作成日時：2018年11月1日 17時
