おにんぎょう ページ48
さあ、千年以上もかけた壮大な計画が動き出した。
クルルとの問答を終え、意識のなくなったAを腕に抱えて暗い都市内を歩く。
優が逃げたのも、Aがその手伝いをするのも計画通り。このままいけば、ミカもクルルの血で吸血鬼になるだろう。
全てが自分の計画のうち。ずっと、この状況を作るために振る舞ってきた。
ミスの許されないスリルある時間は終わり、今日はここまで。
…しかし、腕の中の少女の息がないのは何故だろう。それだけは、不測の事態だった。
「ほら、僕の部屋についたよ〜。もしかして、ほんとに死んじゃった?」
屋敷について、飾りとしての役割しか果たしていないベッドにAを寝かせる。
耳をすますが、心臓の音は聞こえない。呼吸もしていない。完全に死体だ。
穏やかな顔で、まるで眠っているように見える彼女の頬をするりと撫でる。
ああ、まずは着替えよう。服も髪も血塗れになってしまった。
その場で服を脱いで、体を拭く。丁寧に汚れを落としていく。
今目覚めてくれたら、僕の裸体を見て、きっと面白い反応をしてくれるのに。そう思ったが、ベッドの上の彼女は死んだまま。
新品の服に着替え終わっても、彼女の様子は少しも変わらなかった。
「ねえ。…どうして蘇生しないのかな」
死因も分からない。いきなり意識を失って、そのまま心臓も止まってしまった。
頬を撫でるだけでは足りなくなって、なんの気なしに額に口づけしてみる。
目蓋に、鼻の頭に、頬に、唇に。どんどん口づけをする。
きめ細かい白い肌は彫刻のようで、微動だにしないその姿は本当に人形のようだった。
つまらない。反応を返さない人形に興味はない。
「こういうことしたら、君は怒るでしょ?」
閉ざされた形のいい唇をこじ開けて、舌を入れてみる。
上顎を撫でて、歯列をなぞり、彼女の舌と絡めてみるが、抵抗なんてなにもない。ただの虚しいお人形遊び。
すぐに飽きてしまって、口を離す。名残惜しそうに銀色の糸が引いたが、すぐに切れた。
つまらない、つまらない。
ここで彼女が死んでも計画に支障はないが、彼女がいるといないのとでは楽しさが違う。
まだゲームの途中なんだ。逃げるなんて許さない。
結局、日が昇りきっても彼女は目覚めなかった。
もしも次、目を開けた彼女を見れたら、僕の心はどんな反応をするんだろうか。
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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時