どろぼう ページ41
夜だ。日の当たらない都市では昼も夜も関係ないけれど、夜になれば人間は眠りにつく。
人間社会の真似事でもしてるのか、明かりを消した廊下を私は一人歩いていた。なかなか寝付けなかったので、体を動かそうと思ったのだ。
目的もなく歩いていれば、執務室の扉がゆっくりと開いて、誰かが出てきた。フェリドではない。未発達の体をした、家畜の子供。
「あれ、ミカ君?」
「…っ!あ…Aさん…」
「なにしてるの?」
綺麗な金髪を揺らして、ミカが振り返る。かなり驚かせてしまったらしい。声がひきつっていた。
手に何かを持っているようには見えない。けれど、咄嗟に手で腹のあたりを隠していた。なにか隠し持ってる?
「ちょっと失礼」
「あっ」
「ん〜、紙、と…なんだろ。固い…この形は拳銃かな?」
気になったので、勝手にお腹を触らせていただいた。服の中に色々入れている。もしかして、盗んだのか。
「あの…お願いします。このことは…」
「言わないよお。でも、なんで?脱走でもするの?」
「…」
「教えてくれないと言っちゃうかも」
「…っ、はい。今夜…」
なるほど。大した行動力だ。
別に止めるつもりはないけれど、子供だけで果たしてうまく逃げられるのか。
心配だなあと考えて、そういえば昼間、警備の薄い場所が描かれた地図を見せてもらったことを思い出した。
「ね、ミカ君。それ、私もついて行っていい?」
「え?」
「実はね、わたしも今日秘密の情報を見つけちゃったの。きっと役に立つと思うなあ〜」
お願い、と顔の前で手を合わせれば、最初は渋っていたミカだったが、私がいることでのメリットを語ってあげれば最後には了承してくれた。
せっかく仲良くなったのだし、最後まで面倒は見てあげたい。歳下の可愛い子へのお姉さん心というやつだ。
こういう展開になるのなら、武器は必要だろう。ちょうど物置のようになっている部屋が目の前にあったので、そこから適当な剣を拝借する。
「使えるんですか?」
「多少の心得はね」
二級武装の、一般吸血鬼まではぎりぎり殺せる程度だ。貴族にはとても敵わない。
「さ、行こうか。君の家族のところまで」
必要なものも揃ったので、私はミカの手を引いて、夜の屋敷を抜け出した。
98人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時