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こういしょう ページ32

クローリーの端正な顔が歪むのを見上げながら、私は考える。


今、クローリーを助けられるのは血だけ。ならどうにかして私の血を吸ってもらわなければ。



右腕はベッドに縫い付けられてしまっているが、幸い左手は自由に動かせる。

私は口の前に持ってきた左腕を、思いきり噛み切った。すごく痛い。傷口から血が垂れる。




「クローリー様」



「ぐ…っ」



「飲んでください」





それをクローリーの口元に近づければ、彼の喉が鳴った。ごくりと喉仏が動く。目線は私の傷口に釘付けだ。



「クローリー様…」




もう一押しだと、腕を伸ばして血をクローリーの口につけた。

微かにそれを舐めとる感触がして、次の瞬間には首筋にクローリーの鋭い牙が突き刺さっていた。



ぎゅるるると血の吸われる音が耳元で響く。

クローリーに血を吸われるのはこれで二度目。初めては八百年前だった。




夢中で血を吸うクローリーの背中にしがみつく。

血がなくなるのと共にだんだん体の力も抜けてきて、もう少しで死ぬなと思った途端、首から牙が抜かれた。




「はぁっ…」



「え…?」




首の傷が痛む。貧血で頭がぼーっとする。

生理的に滲んだ涙で歪んだ視界に、口を血で汚したクローリーが映った。



「あ、の…わたし、まだしんで…」




死んでいないのに、途中で吸血をやめられるのは初めてだった。

戸惑う私の頭を優しく撫でて、クローリーが言う。




「君のことは殺さないよ」



「なんで…。血は、飲めたのに…」



「血は飲めても、殺すのは無理だ。それをしてしまうと、僕が僕でなくなる」





よく分からない。

とにかく、いつもは吸われた直後にリセットされていた体が、死んでいないせいでひどく重い。

首の傷も腕の傷も痛むし、このままだと意識もなくなる。




血を吸われた後遺症がこんなに辛いなんて知らなかった。これからは血を吸われる事への意識が変わってしまいそうだ。




ゆっくりと暗くなる視界に、クローリーがいる。


私は完全に意識がなくなってしまう前に、必死でクローリーの服を握りしめた。

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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時

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