でぶしょう ページ25
そうしてクローリーと再会を果たし、フェリドの屋敷で変わらぬ生活をしているうちに、あっという間に二年が経ってしまった。
長く生きると時間の流れが本当に早くて、気をつけていないと「気がついたら十年が経っていました」なんてこともざらにある。
この二年の間、私は一度もフェリドの屋敷から外に出てはいなかった。
毎日好きな時間に起きて、美味しい食事を食べて、屋敷の中を散歩したり読書したりしながら時間を潰し、好きな時間に寝る。最高に怠惰な生活だ。
クローリーも、約束通り二ヶ月に一度か二度の頻度で訪ねてきてくれるから、それほど寂しい思いもしていない。
ここの生活は、怖いくらいに快適だった。
「あれ、フェリド。どこか行くの?」
「やあ。暇だからさ、ちょっと散歩でもしようかと思って」
いつも通り屋敷の中をぶらぶら歩いていると、同じく屋敷を歩いていたフェリドに遭遇した。
散歩というのは、都市内をということだろうか。フェリドはたまに側近の吸血鬼を連れて、家畜の様子を見に行っているようだったから、今日もそれかもしれない。
「…私も行ってみようかな」
「あれぇ、出無精な君が、ついに外に出る気になった?」
「だってここ、屋敷から出ても太陽に当たれるわけでもないし、外も中も大差ないんだもん」
「吸血鬼は太陽に嫌われてるからねぇ」
そう言って笑うフェリドは、すっかり私と外出する気のようだ。いつも退屈している吸血鬼さまは、日常の少しの変化にも敏感だった。
「屋敷から出るなら、その格好じゃまずいね。一般吸血鬼用の服を貸してあげるよ。おいで」
「ああ、あのフードつきの?やっぱりこれじゃまずいか」
自分の今の格好を見下ろす。
私は人間のくせに、都市内で唯一家畜の服を着ずに、お嬢様風のブラウスとスカートを身につけている。
屋敷内ではフェリドの傘下の者しかいないからそれでいいとしても、外に出るなら目立たぬ工夫が必要らしかった。
フェリドの後について行けば、吸血鬼用の衣装をまとめた部屋に案内される。
そこから私に合ったサイズの服を選んで、手渡された。
「この際だし、これあげるよ。今度から外に出る時はこれを着るように」
「わ、ありがとう」
吸血鬼の衣装というのは微妙な気持ちだが、暇つぶしの選択肢が広がるのは助かる。
私はお礼を言って、早速それを身に纏った。
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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時