ひとだすけ ページ3
しばらくぶらぶらと歩いてみて、どうやら本格的に世界が滅亡したのだということは分かった。
大人は死んだ。子供は生きてる。そして何故か化け物がそこら中を徘徊している。
これが日本だけの出来事なのか、世界中がこうなっているのかは分からないけれど、しばらくは別の国に行くことも無理そうだ。残念ながら私は船も飛行機も運転できない。
こんな世界でも、吸血鬼は変わらず生きているらしい。その事には少し安心した。
こんな呆気なく、彼が死んでしまったらそれこそ死んでも死にきれない。何百年も探し続けているのだ。こんな事でいなくなられてたまるもんか。
歩きながら、自分がこれからどうするかを考える。
世界がこうなってしまっても、私も彼もまだ生きている。
ならやる事は前と変わらない。探すのだ、彼を。
「お?」
ようし、と気合を入れたところで、コンビニのすぐ横にある路地の中に六、七歳くらいの兄妹が隠れているのが見えた。
本人たちは隠れているつもりらしいが、あんなところにいてはすぐに見つかってしまう。助けに行こうか、どうしようか。
しばらく悩んでから、そちらに足を向ける。
時間は腐るほどあるし、目についた子供に手を貸すくらいならいいだろう。
私が近づくと、お兄ちゃんだろうか。男の子の方が、妹を私から隠すようにする。
「だ、誰っ!?」
「しー、大丈夫だよ。私は悪い人じゃありません。君たちをもっと安全なところに案内してあげる」
「え…あ、が、外国の人…?にほんご…」
ぱちぱちと、目を瞬きながら男の子が私の顔を見つめる。
ああ、私の外見は銀髪に桃色の目で、顔つきも日本人には見えないから混乱しちゃうのか。
「しばらく日本に住んでるから、日本語もペラペラなの。すごいでしょ」
「うん…」
素直に頷いてくれる。子供はあまり得意じゃないけど、こういう様子を見ると可愛いと思ってしまう。
安心させるようににっこり笑って手を差し伸べてあげると、男の子はおずおずとその手を取ってくれた。
「さ、行こうか。そっちの子は大丈夫?怪我とかしてない?」
「あ…妹が、さっき転んで…膝から、血を」
「なら、そこのコンビニで消毒だけしていこう」
そう言って私が振り返ると、コンビニの向こうからフードを被った大人の男が歩いているのが見えた。
吸血鬼だ。
98人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時