てがみ ページ12
ひとまずの用事は終わったようなので、私は早く本題に入りたい。
すなわち。
「フェリド、もういいでしょ」
「ん?」
「私、クローリー様に会いたい。クローリー様、どこにいるの?どうすれば会わせてくれる?」
私がそう聞くと、フェリドは静かに微笑み、顎に手を添えながら「ん〜」と軽く唸った。
「どうしようかな」とぶつぶつ独り言を呟いたと思ったら、ぱっと顔をこちらに向ける。
「会わせるの自体は構わないんだけどね」
「うん」
「今すぐは無理」
なんで?と問えば、そりゃそうだと即答される。
今、人類は十分の一が死んでしまって、吸血鬼も食料確保に大忙し。だからそれが落ち着くまで、しばらくは無理、と。
それは、考えてみればそうかもしれない。でも、そんなに待っていられない。
「どうにか…どうにかできないの?」
「そんなこと言ってもねぇ。そうだな、クローリー君に呼び出しの手紙を書いて送ろうか。急ぎの用だといえば、あっちが落ち着いたらすぐに来てくれるよ」
「じゃあそれ!」
いい方法があるじゃないかと、フェリドに早く手紙を書けと催促すれば、「吸血鬼使いが荒いんだから」と文句を言いながらも、すぐに使用人の吸血鬼に便箋を持ってきてもらって手紙を書いてくれた。
それを側で待機していた吸血鬼に渡す。
「これ、第十三位始祖のクローリー・ユースフォードまで。急ぎの用だと伝えて」
「はっ」
吸血鬼は手紙を持って、広間を出て行った。
あの手紙が届くのはいつになるだろう。あれをクローリーが読んで、仕事が落ち着いてこちらに来るまでにどれだけの時間がかかるだろう。
それでも、百年もかかるはずがないのは明白だった。
ついに会えるのだ。それを考えれば、自然と頬が緩む。
「えへへぇ。ありがとう、フェリド」
「うわ、だらしない顔〜。それに素直。そんなに嬉しい?」
「嬉しくて死んじゃいそう」
「そんなことで死ねるなら幸せだよねぇ」
たしかに、と笑う。
フェリドには恨みがあるが、今ばかりは神や天使のように見える。
私が、クローリーに会ったらまずなにを話そうかと考えている横で、フェリドはじっと私の横顔を見つめていた。
「ほーんと…警戒心が薄いところは変わらないんだから」
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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時