くつじょく ページ11
こんなにたくさん、食べきれないと分かっているのに用意するのは食材が勿体ないと思うけれど、吸血鬼はそういうことにも興味がないのだろう。
ほとんどの料理を残すことに罪悪感を覚えながら、食事を終えた。
「もういいの?」
「こんなに食べきれないよ」
「そう。なら、今度は僕が食事する番ね」
フェリドが椅子から立ち上がり、こちらに歩いてくる。
血も飲まないからおかしいと思った。最初からこのつもりだったのか。
「逃げないんだ」
「逃げきれないのは分かってるからな〜」
「ほーんと、可愛げなくなったなぁ」
笑いながら、フェリドが私の目の前まで来た。
胸元で結んでいたリボンを緩めて、ブラウスの第三ボタンまで器用に外されてしまう。
襟を広げると、首元から胸元までが露わになった。
いきなり外気に触れた素肌が、ひやりと冷える。
フェリドの視線が途端に熱を帯びたものになる。私の首を見て、赤い瞳が獲物を狙う肉食獣のように細められた。
逃げるのを諦めたとはいえ、吸血されるのは久しぶりで体が強張ってしまう。ぎゅ、と拳を握りしめた。
「吸うよ」
「ん…ぅ、あ」
ぶちっと肉の切れる音がして、ずずずっと勢いよく血を吸われる。
痛いし、相変わらず気持ちいい。
椅子に座っている私にフェリドが覆いかぶさっているせいで、私はフェリドの体に閉じ込められているような形になっている。
無意識のうちに、右手がなにか縋れるものを探して、目の前にあったものを握りしめた。
どんどん血がなくなっていって、命が失われる感覚がして、ついに私の視界がブラックアウトした。
そして、一瞬で目が覚める。
「っはあ」
「ああ、美味しかった。これだよね〜。殺すまで飲んだのに死んでない。この感じ」
「…満足した?」
「まあ一応は。ところでさ、これ、なに?」
どれ?
フェリドがにこやかに、自分の腰のあたりを指さす。
つられて視線をそちらにやれば、私の右手がしっかりとフェリドの服を握りしめていた。
「…屈辱」
「いや、可愛くていいと思うよ〜。君が僕に縋ってくるなんて、初めてじゃない?うわ、なんかきゅんきゅんしてきた。なにこの気持ち?」
「吸血衝動でしょ。吸血鬼なんだから」
「そりゃそうか」とフェリドはけたけた笑っている。
楽しそうでなによりですね。
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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時