ばけもの ページ2
私がこの日本という国に来てから、何年が経っただろう?
百年はまだ経過していないはずだ。せいぜい、五十年に届くか届かないかくらいのはず。
この国はとても平和で、今まで生きてきた中で死んでは生き返りを繰り返し続けた不死者の私は、この数十年、一度も死んでいなかった。
だから、久しぶりに死んだこの日、私はたいそう驚いたのだ。
数十年ぶりの死に加え、死因が分からないときた。
しかも死んだのは私一人だけではない。周りを歩いていた人間は、ほとんどが死んでしまっていた。
例外は小学生くらいまでの子供たち。けれどその子たちも、大声で泣き喚いている間に、今までどこに隠れていたのか。吸血鬼たちに連れ去られてしまった。
そんな中を、私は一人歩いていたのだが…。
「…なにー、これ」
目の前に、とんでもなくデカい化け物がいる。
鎌のような腕をいくつも持っていて、カマキリに似ているような気もするが、こんな生き物見たことがない。
ぎょろりとこちらを睨まれる。気づかれた。
「おわわっ」
私の存在に気付いた瞬間、いきなり鎌を振るってきた。殺意が高い。
見た目から危険なやつだとは思っていたが、どうやら出会ったら殺される系の超危険なやつだったらしい。
コンクリートの地面が粉砕されて、電柱が傾いた。
これは勝てない。すぐに逃げよう。
「わっ追ってくるの!?」
巨大な体を器用に動かして、猛スピードで私の跡をついてくる。その間にも、伸縮自在らしい鎌のついた腕をこちらに向けて放ってくる。
それを避けるだけでも大変なのに、一撃の威力が強いせいで顔に砕けたコンクリートの破片が当たる。口にも入った。
目に入ったら痛そうなので薄目になるが、そうすると攻撃を避けきれなくなってくる。
「あっ」
ひゅん、と風を切る音がして、それと同時に私の胴体も真っ二つになっていた。
それを見届けた化け物は、私に背を向けてどこかに行ってしまう。
しばらく倒れたままそれを見送って、そいつが見えなくなると体を起こした。
「…う〜、どうせ殺すなら即死させてくれないと…ああ、まだ痛い気がする。…まあ、体がくっつくところを見られなくて良かった」
汚れた服を払いながら立ち上がる。
今の襲撃で穴だらけになってしまったコンクリートの道を見ながら、私はため息をついた。
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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時