へんたい ページ7
ついに、ついに見つけた。
七百年と少し前。四捨五入して八百年前、ヨーロッパの地で出会った銀髪の変態貴族、フェリド・バートリー!
「ここで会ったが八百年目…!!」
「いやいや、ほんと久しぶりだよねぇ。あれからもうそんなに経った?君もこの国にいたのか。その服、似合ってるよ」
にこにこ、にこにことフェリドは喋り続けている。
なんでそんなに嬉しそうなんだ。最後に自分が私にした事を忘れてしまったのか。
…いや、忘れていても不思議じゃない。なにせあれから随分と時間が経ってしまった。
「でも、私はずぅっとお前を探してた」
「え、なんで?」
「クローリー様がどこにいるのか。お前なら知っているでしょ」
私がぎろっと睨んでそう言うと、フェリドは目を丸くして口を閉じた。なんだその反応。
「…え、君、まだクローリー君と会ってなかったの?この八百年間、一度も?」
「…だから聞いてるの」
「ふぅん…そっかそっか。なるほどね〜?」
今度はにやにやと、フェリドはこちらを見てくる。
吸血鬼というのは、本当に時が止まってしまっているらしい。この感じ、あの時と全く変わらない。
「事情はわかったよ。僕の屋敷においで。服と食事を用意してあげよう」
「…いいけど、血は飲ませないからね」
「あはぁ、なんだか君、可愛げなくなったね」
うるさいなあ。
そりゃあ、もう数百年生き続けているのだ。ほんの二十年くらいしか生きていなかったあの頃よりかは、色々達観してしまった。
…本当に、色々変わってしまったのだ。私も。
あんまり慌てることはなくなったし、吸血鬼に出会ったからといって動じることもない。
死ぬのも、あの頃は本当に恐ろしかったけれど、今は昔よりも死に対して忌避感はなくなってしまった。長い旅の中で、自死を選んだこともある。
死ぬのが怖くなくなると、色々なことに対しての恐怖心も薄れてくる。
その中で、自分の人間性が薄れていくことに恐怖を感じ、物語を読み漁って感受性を鍛えようとした時期もあった。
それでも一番私の心を揺さぶってくれるのはクローリーとの思い出で、私はそれを支えにこの数百年を生きていた。
ああ、会いたい。クローリーに会いたい。
フェリドと再会したおかげか、クローリーを求める気持ちが少し大きくなった気がした。
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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時