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とらうま ページ17

「もう、なに?読書の邪魔ー」



「…えー、少しもドキドキしないの?もうちょっとピュアじゃなかった?君」





さらりと、フェリドの長い銀髪が顔の横に垂れた。

端正な顔が、寝そべる私を覗き込んでいる。



そりゃ、二十年しか生きていなかった私なら、こんなことされれば相手がフェリドだったとしても大慌てだっただろう。顔も真っ赤にして、情けない姿を見せていたはずだ。


けれど今の私は七百数十歳。正確な数字は忘れたけれど、中身は仙人レベルで生きている。ちょっとやそっとじゃ動じない。





「ふうん、聖書ねぇ。それ読んでクローリー君のことでも考えるの?」



「そうだけど、フェリドが視界に入ったせいで嫌なこと思い出した」



「あはぁ、たとえば?…ここかな?」






そう言って、私の胸に手を添えてくる。

「いきなり女子の胸に触ってくるやつがあるか」と怒ろうとしたが、フェリドの手の下に、ちょうど私の心臓がある事に気がついて、どきりと鼓動が大きくなった。



あの時、嫌というほど心臓をこの手で潰されたことを思い出す。


あれは、今まで死んだ中でも一番痛くて、気持ち悪くて、最悪な死に方だった。





「…そこは、だめ」



「あは、ドキドキしてる。やっぱり気になっちゃう?」



「変な言い方を…。あなたのせいでトラウマになっちゃったんでしょ」





は〜と溜息をつきながら、持っていた聖書で視界を覆った。


視界が暗くなると、心臓の音が尚更大きく聞こえる。

どくん、どくん。



くすくすと、フェリドが笑う声がする。さっさと手をどけてほしいのだが、大きな手は私の胸から離れない。




だんだん、苦しくなってきた。なにも映さない視界にあの時の情景が蘇る。





荒れ果てた屋敷で、今にも死んでしまいそうなクローリー。

涙を流しながらそれを見て、なにもできないまま、何度も殺される。


体が化け物になっていく痛みに悲鳴をあげるクローリーに、手を握りしめられた。

それを握り返して、また心臓を潰されて殺される。







痛くて、辛くて、苦しくて。

それをしたのは、全部、目の前にいるこの男。







「クローリー様…」






ぽつりと呟いたその名前に反応するように、執務室の扉をノックする音が響いた。

なごや→←ねこ



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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時

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