彼が吸血鬼になるまでの (ページ9)

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せいかんページ9

真っ暗だ。

視界の全てが黒で塗りつぶされていて、今自分が目を開けているのかも分からない。

でも、こんな事を考える意識はある。

…たしかに死んだと思ったんだけど。

少し腕を動かしてみる。どうやら、自分は狭い箱の中に寝かされているらしい。

ぐっと、天井に両手をついて力を入れる。少し浮いた感覚がした。もっと力を入れれば脱出できるかもしれない。

「ぐぐぐ…うりゃあ！」

ボコンッと蓋が開いて、外の光が差し込んできた。

起き上がってみれば、自分は棺桶に入れられて、土の中に埋められていたらしい。

さっきまで土の中にいたので明るく感じるが、外はもうすっかり暗い。夜だ。

「…？これは、私、土葬されてた…？え、生き埋め？」

ぞぞぞっと背筋に鳥肌が立つ。あの男ならやりそうだ。だって変態だもん。

それにしても、よく地面の中から出られたな。自分がこんなに力持ちだったとは。

きょろきょろと周りを見渡してみれば、どうやらここはフェリドの屋敷から少し離れた墓地の一角らしい。

そこかしこに、同じように土葬された後がある。

…とりあえず、街に戻ろう。屋敷の近くにいても危険なだけだ。

来た時に通った道を見つけて、小走りでそこを目指す。

来た道を戻れば、元いた場所に辿り着くはずだ。

人気のない夜の道を辿りながら、私はそっと首筋に指を添える。

牙を突き立てられたはずの傷は、どこにも見つけられなかった。