彼が吸血鬼になるまでの (ページ45)

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きかんページ45

その日、数ヶ月ぶりにテンプル騎士団が戦争から帰還した。

街の人間たちが、敗退して帰ってきた騎士たちを出迎える。皆傷だらけで、中には腕や足がなくなっている者もいた。

その集団の中に、クローリーの姿を見つけた。

野次馬たちの中から必死に首を伸ばしてその姿を追うが、クローリーはこちらに気づく様子はない。

仕方がないので、集団が騎士団の庁舎に向かうのを、野次馬に呑まれないよう少し離れたところから並行して追いかけた。

庁舎はひどい有様だった。

大勢の怪我人が中に運び込まれていく。地面には血の垂れた跡もあり、騎士と、それを出迎える街の人とでごった返していた。

クローリーの姿を見つけたからといって、とてもじゃないが話をできる状況じゃない。

大人しく家でクローリーが帰ってくるのを待っていようか。でもそうすると話せるのがいつになるか分からない。

どうするべきか決めかねて庁舎の周りをうろうろしていると、慌ただしく出入りする騎士の一人にぶつかって、体がよろけた。

しまった、邪魔になるところに突っ立ってしまった。
倒れる…！

踏ん張ろうとした足が滑ってしまい、そのまま転びそうになった私の体を、後ろから誰かが支えた。

「おっと」

「あ…ごめんなさい。ありがとうございます」

「帰ってきて早々、危なっかしいな」

お礼を言って振り向こうとした時、私を支える誰かが聞き覚えのある声で小さく苦笑した。

その言葉に目を見開いて、慌てて顔を合わせる。

「ただいま、A」

「クローリー、様…」

数ヶ月ぶりに顔を合わせたクローリーは、体は汚れ、顔は疲れ切っていて、正直ちょっとだけ臭ったけれど、優しい雰囲気は変わらぬままそこにいた。

「おかえり、なさい」

「うん。元気にしてたかい？」

そう言われると、この数ヶ月は夢のせいで全然元気ではなかった。

でも、それはこっちの台詞だ。

「私より、クローリー様は大丈夫ですか？どこか痛かったり、無理してたり、あとは…」

心が辛かったり、苦しくて、泣きたくなったり…。

それが一番の心配だけれど、そんな言葉は言えなかった。
ぐ、とクローリーの目を真正面から見つめれば、クローリーは少し驚いた顔になり、周りを見渡してから軽く私の手を引いた。

「ここは少し人が多いな。場所を移そう」