彼が吸血鬼になるまでの (ページ43)

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そのひページ43

撤退の命令を下してから、また何日も経った。

私は眠りにつくたびに、今日は何人仲間が減ってしまっているのか、まだ生きていてくれているだろうかと、不安で堪らなかった。

それでも毎晩の夢でも、昼間に意識を失ってしまう時の夢でも、ヴィクターやクローリーは生きて国を目指して歩いていた。

騎士たちは皆ぼろぼろで、言葉を発する体力も残っていないようだったが、生きて、歩いていた。

その日の晩、いつもと同じように戦場を歩く騎士たちを俯瞰して追う夢を見た。

毎日夢を見ている中で、夢の中で視線を動かすことにも慣れてきた。あとどれくらいで目的の場所に着くのかと、騎士の集団から目を離して進行方向の先へ先へと進んでいく。

すると、数日前までは恐ろしく遠く見えていた目的の城壁が、あと一晩歩けば到着できるところまできていた。

そのことを皆に伝えたかったが、私の声が届かないのは知っている。
それでも、夢の中であと少しだから頑張って！と精一杯の念を送った。

その日は珍しく寝覚めが良かった。

朝早くに目覚めて、今ごろはクローリーたちの目にも城壁が見えている頃かと考える。

そこで、私は思い出した。

ヴィクターたちは国に生きて帰っては来ないことを。

その死因は、異教徒に殺されるわけではなく。

…助かったと思った瞬間に、吸血鬼に血を吸われてしまうのだ。

ぞっと、体中が凍りついた。

もしかして、今日がその日なのかもしれない。

クローリーが信仰をやめた日。悪魔に仲間を殺され、死ぬほど心を傷つけた日。

心臓が嫌な音を立てる。
どうしても、じっとしていることはできなかった。

私はまだ日も登りきっていない時間に家を飛び出した。
向かうのは、フェリドの屋敷だ。

「フェリド・バートリー！いるんでしょう！？」

街から少しはずれた場所にある屋敷。
その扉を力任せに叩いて、叫ぶ。

もう私がどんなに頑張って走っても、間に合わない。
本気でクローリーたちを助けたいと思うなら、頼る相手はこいつしか思い浮かばなかった。

「お願い、助けて！今すぐ私を戦場に連れて行って！お願い！」

屋敷からは何の反応もない。

「次会った時は友達になろうとか言ってたでしょ！私、ちゃんと生きてる！友達なら助けてよ！」

本当に人が住んでるのかと思うくらい、屋敷からは人間の気配がしなかった。