彼が吸血鬼になるまでの (ページ41)

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あくむページ41

そうして楽しい夜も終わり、クローリーは戦争へと行ってしまった。

できることなら、ついて行きたかった。でも自分にはそんな力も、勇気もない。

だからせめて、クローリーが怪我をしませんように、きっと生きて帰ってきてくれますようにと、教会に毎日お祈りに行く。

こちらの世界に来てからほとんど毎日クローリーとお祈りはしていたけれど、騎士たちが十字軍に出征してからはいつもより教会にいる人の数が多い気がした。

きっと、皆私と同じことを神様に祈っているのだろう。

クローリーに貰ったロザリオを胸の前でぎゅっと握りしめ、毎日毎日、教会で祈った。

日常の変化はそれだけではない。

十字軍の戦争が始まるのと同じ頃、私の体にも異変があった。

「う、く…っ」

また、悪夢だ。

近頃眠りにつく度に、必ずと言っていいほど悪夢を見る。

内容は、おそらく戦争の光景。

血塗れの大地に、大勢の人間が武器を持って殺し合いをしている。
そこら中に人間の手足や胴体、頭が千切れて転がっていて、目をそらしたいのにそらせない。

夢の中の自分には体がなくて、ただただそんな地獄のような光景を、目が覚めるまで見せられるのだ。

夢の中にはクローリーも度々登場する。
血や臓物で汚れた体で、雄叫びを上げながら何人もの異教徒たちを切り伏していく。

いつも優しいクローリーのそんな姿が私にはとても怖く思えて、目の前を飛ぶ人間の腕や首が気持ち悪くて、起きた時には涙を流している。体も汗でぐっしょりだ。

ひどい時にはそのまま嘔吐してしまうこともあり、とにかく最近はまともに寝れていない。

クローリーの家の使用人たちにも心配をかけてしまっている。
寝不足で仕事中に倒れてしまうこともあり、意識を失うとまた悪夢を見てしまうので、目覚めた瞬間に吐いてしまう。

仕事にも支障が出ていて、皆にも迷惑をかけている。
申し訳ないと思ってはいても、そんな心境とは裏腹に日が経つごとに私の体調は悪くなっていった。

そんな生活が、数ヶ月続いた。