彼が吸血鬼になるまでの (ページ5)

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もしかしてページ5

落ち着け落ち着けと、大混乱中の頭に言い聞かせる。

焼け石に水感が半端ないけど！だってこれ、この状況で落ち着ける人間いる！？

まずは、今ここで殺されないようにすることを目標に、平静を装いながら息を吸う。

「こほん、ええと、えーっと、…あれ、なんだっけ、えーっと、…なにか、私にご用でしたか？」

「え？あー、うん、そうそう。ご用ご用。これから僕と一緒にご飯でも食べないかって話してたところじゃないか～」

絶対嘘でしょ。実際喋ってみるとほんとに付き合いにくいなこの男。

「ええ？あー、そう…でしたっけ？」

「そうだよ。君、見たところ平民だろ？田舎貴族とはいえ、僕の方が位はずうっと高いんだ。貴族の食事に招かれるなんて、光栄なことじゃあないか」

さあ行こう、すぐ行こうと手をぐいっと引っ張られる。
男性に慣れていない私は、そんな少しのスキンシップにもどきりとしてしまったのだけど、それは置いといて。

…そういえば中世ヨーロッパって身分制度があったんだっけ。クローリーも貴族って設定だったからすっかり忘れてたけど、本来平民はもっとかしこまった方がいいのかもしれない。

そこで、はっと気がついた。

クローリーは！？もしかしているんじゃない！？だってフェリドがいて、ここは中世ヨーロッパ風で、ということは時系列的には、ここは八〇〇年前の十字軍の時代なんじゃ…！？

フェリドに手を引かれて、小走りになりながら、私はそれっぽい仮説をかちゃかちゃと組み立てる。

ここで意識が目覚めるまでの記憶がおぼろげだけど、渋谷の横断歩道を渡っていたところまでは覚えてる。

ということは、私はそこで事故にあって死んでしまって、なぜか生前好きだった漫画の世界に入ってしまった…。

これだ！だって夢小説で同じような話がいくつもあった！

つまりこの状況は、私が主人公のトリップもの夢小説なんだ！！