彼が吸血鬼になるまでの (ページ36)

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こころページ36

夜風に当たりに外に出て、寄ってくる従騎士たちを手で追い払っていると、すぐにヴィクターも外に出てきたのが見えた。

あいつも随分飲んでいたからなあと視線を向けてみれば、女の子の腕を掴んでいる。本命の子でも見つけたのだろうか。

女の子を取っ替え引っ替えしているヴィクターにもついに、となんとなしに見ていれば、その娘の髪色に見覚えがあることに気がついた。

あれ、もしかしてAかな？

この辺りで銀の髪は珍しい。特に彼女の髪は、いつでもきらきらと光を浴びたように輝いていて、夜になるとそこだけ光が当たったように映えるのだ。

いちいち言わないけど、その髪が僕は結構好きだった。だから、間違えることはないと思うが…。

「なんで？」

そうなると、いくつか疑問が湧いてくる。
どうしてここにいるのかとか、なんでヴィクターといるのかとか。

彼女が来るなら、僕のところに真っ先に来てくれると思ってたんだけど。

どうにも気になってしまって、離れたところから二人の様子を見る。

男女の逢瀬を盗み見するのは無粋だと思うが、あの二人がどんな関係なのか、気になって目を離せない。

不意に、ヴィクターがAの腰を引き寄せて、抱きしめた。

おいおい。

ぴく、と顔が強張る。
小柄なAの体は、ヴィクターの体にすっぽりとはまってしまって、表情は見えない。
だが抵抗する気はないようだ。大人しく抱きしめられるがままになっている。

ヴィクターは彼女が好きだったのか。だから、先ほど僕にあんな話を振ってきたのか？

Aも抵抗しないということは、まさか既にそういう関係だったのだろうか。僕の知らないところで、いつの間に親密になったのだろう。

なんだか胸のあたりがざわざわしてきた。

なんだろうこの感情は。娘を取られる父親の気持ちとはこういうものなのか。

じっと抱きしめあったままの二人だったが、ヴィクターが動きを見せた。

彼女の頭に手を当てて、無理やり上を向かせて、彼女とキスをする。

見間違いかと思ったが、長い。間違いなくキスだ。彼女はこういう事には不慣れだと思ってたのに、抵抗しない。

無意識に、手に力がこもった。