彼が吸血鬼になるまでの (ページ32)

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おんなページ32

クローリー・ユースフォードは、仲間たちが酒や肉、女を手に盛り上がっているのを食堂の隅で静かに眺めていた。

皆、とても楽しそうにしている。少々やり過ぎではないかと思うくらいの盛り上がりっぷりだ。

その中でも中心で騒いでいる、ヴィクターの姿を見ながら、クローリーは先ほどのヴィクターとの会話を思い出していた。

◆

「おいクローリー、こっちに来て一緒に騒げよ。向こうには可愛い女の子もいっぱいいるぞ」

「女の子って、貞潔の誓いは一体どうしたんだよ？」

「堅いこと言うなよ」

　

テンプル騎士団にほとんど同じ時期に入った仲間であるヴィクターは、日頃から訓練をサボって女遊びばかりしている。

今日も、彼は先陣を切って女の子を漁りに行っていたらしい。向こうで、数人の女がヴィクターの方をちらちらと見ているのが視界に入った。

「あ、そうか。お前、ついに女ができたか」

「はあ？」

唐突にそんな事を言われる。なぜ、そんな話になったのか。

「ほら、半年くらい前に、すっげえ可愛い子拾っただろ。名前は、たしか…」

「Aのこと？」

それだ、とヴィクターが指を鳴らす。
にやにやとこちらを見るヴィクターに、はあ、とため息が出た。

「Aはそんなんじゃないよ。そもそも、テンプル騎士では女性との交際は禁止されてるだろ」

「そんなこと言って、実際のところどうなんだ？もう寝ただろ？どうだった？」

ぐいぐいと迫ってくる。酔っているせいだろうか、いつもより遠慮がない。

「寝てないよ」

「嘘つけ。じゃあ、キスはしただろ？」

「してない」

「抱きしめたり」

それはした。
僕が黙ると、ヴィクターは面白いものを見つけたというように、にやついた笑みで身を乗り出してきた。

「したのか」

「ん～」

「さすがに、今日は抱くだろ？それともなんだ、好きな女ほっぽって、別の女にいくのか」

「Aにそういう感情は持ってないよ」

それは本当だ。放っとけなくて、次の家が見つかるまでという約束も曖昧に流してつい家に置いてしまっているが、どちらかというと妹とか、そういう類の感情だと思う。

僕がそう言うと、ヴィクターは見るからにつまらなそうな顔になった。