彼が吸血鬼になるまでの (ページ26)

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きょうかいページ26

私は自分の十字架を持っていなかったので、クローリーに貸してもらえることになった。

神様に対して信仰心は特にないけど、クローリーとお揃いの十字架をつけていけるのは純粋に嬉しい。

にこにことご機嫌でクローリーの横を歩いていると、教会が見えてきた。うわお、本格的だ。

少し緊張しながら中に入れば、前に掲げられた大きな十字架に熱心に祈っている人が何人も見受けられた。

教会に入った途端、お喋りできる雰囲気ではなくなった。厳かな雰囲気に落ち着かないまま、クローリーと隣に並んでお祈りを始める。

…ええと、何を祈ればいいんだろう。ああ、真面目に祈りを捧げているクローリーがカッコよくて集中できない。

すぐ隣に並ぶクローリーをどうしても意識してしまう。伏せた睫毛が長い。とても綺麗だ。

ああ、神様。この煩悩をお許しください。

神に祈る場所で、こうして男の人を意識するのはどうにも罰当たりな気がして、途中からは私もかなり熱心に祈っていた。

祈っても祈っても溢れてくる煩悩に、むむむと眉を寄せていると、いつの間にか終わっていたらしいクローリーに「熱心だな」と褒められた。
　

…それでも、煩悩は消えなかったけどね。

「クローリー様は、この後はテンプル騎士団のお勤めですか？」

「ああ。Aは家に戻るだろう。送って行こうか」

まあ、これといった予定もないので、昨日と同じように家のお手伝いを教えてもらう事になるだろうけれど…クローリーにわざわざ送ってもらうのは申し訳ない。

「大丈夫です。クローリー様もそれは手間でしょうし、来た道を戻るだけなのでちゃんと帰れますよ」

「そうか。なら、充分気をつけるように」

念を押すクローリーに「はい」と返事をしてから、そこで別れる。

クローリーの隣にいると、常に緊張しっぱなしなので、一人になった途端にはふうと息が漏れた。

少し熱く感じる顔をぱたぱたと手で仰ぎながら帰路についていると、背後から声をかけられた。