彼が吸血鬼になるまでの (ページ21)

今日:28 hit、昨日:15 hit、合計:91,835 hit

しページ21

びく、と体が強張った。

うわ、どうしよう。顔を上げたくない。
でも、上げずに相手がなにをしているのか分からないのも怖い。

くそう、と涙目になりながら、ゆっくりと視線を上げる。

そこにいたのは、昨日も出会った、銀髪の美青年、フェリド・バートリーだ。

「う…」

「や、昨日ぶり。住むところ決まったんだねぇ。良かったじゃないか」

ひらひらと手を振ってくる。いつの間にこんなに近くまで来ていたんだろう。さりげなく足を引いて、距離を置く。

「昨日はごめんね。つい」

「血を吸っちゃった？」

フェリドの言葉を遮って、言葉を繋げる。
すごい怖いけど、ここでビビってると思われたくない。

私の言葉に、フェリドの目がすぅっと細められる。

「うん。君の血は美味しかったよ。ごちそうさま」

「…殺すまで吸わなかったくせに、生き埋めにしたのは嫌がらせなの？」

吸血鬼だって、隠す気はないらしい。
警戒しながらも、ずっと疑問に感じていたことを問うてみる。

私の問いに、フェリドはうーんと唸ってから

「いやあ、実は僕がここに来たのは、それについて確かめたくて」

「え？」

と疑問を投げるより早く、とん、と体に衝撃があった。

「こぷっ」

なに？

口から、赤い液体が出てる。

フェリドの腕が、私の体から生えている。

…なに？

「君、昨日確かに、死んだはずなんだよ」

ずぼっと、乱暴に腕が引き抜かれた。

フェリドの手には、どくんどくんと脈打つなにかが握られている。

「なのに、なんで生きてるのかな～？って不思議でさあ」

崩れ落ちた私に向かって、フェリドが何かを言っている。

「心臓を潰したら、さすがに死ぬかな？」

ぶちゅっと、柔らかいなにかが潰れる音がした。

ぱたぱたと顔に破片がかかる。

「あ、せっかく汲んだ水に血が混じっちゃったね。汲み直しとくから、安心してよ」

ばしゃっと水を勢いよく捨てる音がする。それから、井戸を使う音も。

……なに？

………どうして、私、意識があるの？

もう死んでいるはずなのに、いつまでも音が聞こえるのが不思議だった。

それでも、意識はだんだんと薄くなっていく。

「それじゃあね。また会ったら、その時は友達になろう。Aちゃん」

そんな言葉が聞こえたのを最後に、私の意識はぷつりと途切れた。