彼が吸血鬼になるまでの (ページ20)

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おてつだいページ20

そんなこんなで朝のお話も終えて、晴れて私はクローリーの家のお手伝いという任務につくことができた。

肩書きがあると、途端に自分の居場所ができたような気がするね。今まではふわふわと地に足つかない感じがしていたけれど、今は昨日より心をしっかり保てる気がする。

すでにクローリーはテンプル騎士団の庁舎に向かってしまったので、それを見送ってからは掃除や洗濯、料理などの仕事を覚えることになる。

家事はそれほど得意な方ではなかったけれど、クローリーのためだと思えばいくらでも頑張れるよ！

…と、意気込みだけは十分だったはずなのだけれど。

夕方になる頃には、すっかり撃沈していた。

「うううう、日本文化となにもかもが違いすぎる…文化の違い怖い…おうちにかえりたい…」

他の使用人さんたちのスパルタ指導と、やればやるほど見えてくる文化の違いに、私はしくしくと泣き言を漏らしていた。

「ぶつぶつ言っている暇があるなら、次は井戸に水を汲みに行ってちょうだい。私たちみんなもう歳だから、この仕事が一番辛かったのよ」

「若い子が入ってきてくれて嬉しいわ」と微笑まれてしまえば、ノーなんて言えない。「ひゃい…」と力なく返事をして、少し離れた場所にある井戸まで桶を持って歩いた。

「ひいん、重い、冷たい、でも頑張るう」

水は色々な用途で使う。そのため、井戸まで何往復もしなければいけない。
クローリーのためだと思えば頑張れるが、一歩を踏み出すごとにクローリーの顔を思い浮かべなければ心がぽっきり折れてしまいそうだ。

これを、あの使用人さんたちだけで今までやってたのか、すごい、尊敬する。

あとから聞いた話によれば、水は数人がかりで運んでいたので往復する回数はそれほど多くなかったようだ。
…歳っていったって、まだ皆さん三十路くらいだと思うんだけどな。

ひいひい言いながらも、あと一往復すれば十分だというところまで来た。その言葉を信じて、空の桶を持って井戸に向かう。

井戸の水を汲んで重たくなった桶を持つために、よいしょっと視線を下に向けた時だった。

「やあ、頑張ってるね」

頭上に、聞き覚えのある男の声が降ってきた。