彼が吸血鬼になるまでの (ページ16)

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ゆうしょくページ16

クローリーに一晩面倒を見てもらえるという事で、私としては、「まさかクローリーのお家に！？」とか「朝になったらキュン死してるんじゃないだろうか」とか、色々不安だったわけです。

そこで、ただの民家の屋根裏に泊めてもらえるだけと聞いて安心してたんですよ。

なのに、なのに…！

「私なんかが、夕食の席にお邪魔してしまっていいんでしょうか…」

「あんなにお腹鳴らしてたら、無視するわけにもいかないでしょ」

宿に向かう道すがら、こちらに来てから何も入れていなかった胃袋がぐうぐうずっと鳴り続けていたのだ。

クローリーとディナーを一緒にできてラッキーと思うべきか、女子として恥ずかしいと思うべきか…。

うん、普通に恥ずかしいな！クローリーもすっごく呆れた顔して夕食に誘ってくれてたしね！

「あの…卑しいお腹で、本当に申し訳なく…」

「まあ…お腹が減るのは仕方がないよ」

すいっと視線を逸らされた。フォローしてくれてありがとう、優しさが痛い。

クローリーはたしか貴族の三男という設定だったと思うけど、ここは実家の屋敷ではなく、騎士になると同時に頂いた家らしい。

うーん、一人暮らしするにはとても広い。お金持ちなんだなあ。

屋敷から数人連れてきたのだと言う使用人が、テーブルにご飯を並べていく。

ご馳走になるのだからと私も手伝おうとしたが、お客人に手伝わせるなんてとんでもないと怒られてしまった。難しい。

テンプル騎士は肉食を禁じられているため、食事には肉も酒も使われていない。見慣れない料理ばかりだけど、非常にお腹が減っている今はどれもとても美味しそうに見える。

いただきますの仕方も日本とは違うので、クローリーのやり方を真似して、いざ実食。

ああ、美味しい。食べ物を食べられるって素晴らしい。生きているって素晴らしい。

感動に打ち震えながら、がっつきすぎないよう、マナーに気をつけながら食べていく。

それでも、皿の上のものが無くなるペースが早い。食いしん坊だと思われるだろうか…少し恥ずかしい。

一口一口噛みしめながら食べていると、いつの間にか完食してしまっていた。その頃にはお腹も満腹になっていて、非常に満足である。

「満足したかな」

「はい、とっても美味しかったです。ありがとうございます」

ぴしっと背筋を正して、しっかりとお礼を言う。
クローリーには、ちゃんとした女性だと思っていてほしいのだ。