彼が吸血鬼になるまでの (ページ15)

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めんどうなページ15

なんとも見ていてはらはらする娘を拾ってしまった。

今日もいつもと変わらぬ夜の巡回になるはずだったのにと、クローリー・ユースフォードはそっと息を吐いた。

ヴィクターが、予定通りにいけばとっくに通り過ぎていたはずの道に止まっていた時点でなにか嫌な予感はしていたのだ。

案の定、声をかけてみれば非常に面倒な事情を抱えているらしい娘に絡んでいるところだった。

声をかけてきたのは娘の方らしいが、美しい容姿をしていたので、ヴィクターからも騎士にあるまじき誘いをしたのだろうと予想はつく。

一体どんな事情なのかと聞いてみれば、なんとも穴だらけで嘘っぽい、いかにもその場で考えましたというような経緯がつらつらと出てきた。

さすがのヴィクターも嘘だという事は分かっていたようで、説明しながら微妙な顔をしていた。

「あの、宿って、どこかの家に預けられるという事ですか？それともクローリー様の…」

「僕の家の近くに、たしか屋根裏が空いていると言っていた民家があったはずだ。狭くて汚いだろうけど、我慢してほしい」

「大丈夫です！クローリー様のお家でなければ生きていけます！」

どういう意味なんだ、それ。

一瞬侮辱されたのかと思ったが、どうもこの娘、僕と話している最中はずっと顔を真っ赤にして緊張をしているみたいだ。

だから多分好意から出てきた言葉なんだろうけど、他の貴族に言ったら不敬罪で捕まってしまいそうな発言だ。見ていて怖い。

どうせこの時限りの付き合いなのだし、心配するだけ無駄だとは思っていても、放っておいたら死ぬんじゃないかとはらはらする。

あまり情が移らないようにしようと口数を少なくして歩いていると、隣からくう、とか細い音が聞こえてきた。

無視無視、と自分に言い聞かせるも、くうくうくうくう、ずっと鳴いている。ああ、もう！

　
「…お腹減ってるの？」

「へっ！？聞こえてました！？いや、あの、あれです。人体の不思議…」

くう、とまた鳴った。

これは、騎士としてどう対処するのが正解なのだろうか。まさかそこまで面倒を見なければいけないのか。

この場にいない、自分を騎士として育ててくれた隊長の顔を思い浮かべながら、僕はこの夜何度目になるかも分からないため息を吐いた。